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Re: 世界が壊れゆくとき〜The Ability〜 ( No.7 )
日時: 2011/06/20 19:56
名前: みすたー・えっくす (ID: BZFXj35Y)

『こちらA部隊!!現在、東京タワーから東の方角にて異星人と交戦中!!応援を頼みたい!!』

遊也が気絶している間に、東京のあちこちで爆発音と謎の機械音が響き渡り始めた。
東京タワー付近では、数百人以上の自衛隊隊員が武器を持って‘何か’と戦っていた。しかし、辺りは砂煙と炎の壁に包まれて視界が悪く、最早何も見えない同然だった。
「応援部隊の到着はまだか!!もう弾が尽きるぞ!!」
「八坂隊長、こちらに向かっていた応援ヘリが二機とも墜落したようです……異星人にやられたかと…………」
部隊の先頭でマシンガンを両手に持った戦闘部隊隊長の八坂守は、隊員の言葉を聞いて愕然とした表情を見せる。
隊員は腰からライフルを取り出すと、スコープで砂煙の中を見渡す。
「一旦下がりましょう。ここでは犬死が目に見えてますよ。」
「……そうだな。他の部隊に伝えて、安全な南の方角に退去しろ。急げ!!!」
八坂の命令に、隊員は頷くと後ろの方へ下がっていった。
八坂はマシンガンを握り直すと、砂煙の中を見て苦笑いを浮かべる。
「ったく……異星人って…………まんま人間の形してんじゃねえか……」



八坂の目の前に現れた1人の人間──────



髪と肌は白く、目は蒼い。性別は男性か女性かも分からないほどの顔立ちで、体は黒いアーマーで包まれている。
両手には見たことのない形をしたバズーカ砲、太もも部分には小刀の様な物を装備している。
見た目は人間だが、放っているオーラは何か違った。
「くそっ!!待て待て!!!」
八坂の目の前に現れた異星人は、両手のバズーカ砲を向けると躊躇なく発射した。
「ふ・ざ・け・ん・なぁぁぁぁらぁぁぁぁァァあああァァァァ!!!!!」
八坂は2発ともスライディングで避けると、異星人の懐に入り込み、両足で顔面を蹴飛ばした。蹴りは見事に命中し、武装した異星人はフワリと空中に舞い上がる。
「なめんな……な、なんだ!?」
八坂が空中に舞う異星人にマシンガンを向けた直後、八坂の足元に赤い光が現れた。そう、遊也と同じ時の様に。
そして、赤い光は八坂を飲み込んで、その場から八坂と共に姿を消した。



 * * * * *



「う、うぅ……痛たた……」



僕が目を覚ました場所は、マンションのエントランス前ではなく、どこかの道のど真ん中だった。
無論、由紀の姿はどこにもない。立ち上がってみると、そこは国会議事堂前の通りだった。
大通りには車が延々と停車したままの列が伸び、遥か先の空が赤い。火事でも起こっているのだろうか。

「お、おーい!!そこのアンタ、手を貸しくれ!!!」

僕が赤くなった空の方を見ていると、車の列の中から男性の助けを求める声が聞こえてきた。
「ここだよ!!ここ!!足を怪我しちまって、動けねえんだ!!!」
車を避けて駆け寄ると、茶髪で猫目の男性が右足の膝から大量に血を流して倒れていた。
「大丈夫…ですか?」
「大丈夫じゃねえから呼んだんだろ。頼む、手を貸しくれ。」
男性の肩を持って立ち上がらせると、近くの軽自動車のフロントに座らせた。男性はお礼を言うと、安堵の息を漏らす。
「あんがとよ。……ここは、国会議事堂の前か?どうしてこんなところに…………」
男性は右足を押さえながら辺りを見渡す。どうやら、雰囲気的に状況が僕と同じらしい。
「あの、まさかあなたも赤い光に……」
「そ、そうだよ!!あの赤い光が足もとに突然現れて、気付いたらここだ……はァ。」
男性は大きなため息を吐くと、そのままフロントに寝そべった。
「一体なんだよこれ……彼女に逃げられるわ、財布は盗まれるわ……クリスマスが台無しだよ。」
男性の愚痴が始まる。僕は男性に一礼すると、自宅であるマンションに向かおうとした。

「ちょ、ちょっと待てよ!!」

男性は起き上がって振り向き、僕を呼び止める。
「俺の名前は犬田一だ。助けてくれてありがとよ。」
「いえ…僕は樋口遊也っていいます。じゃあ。」
犬田に手を振り、僕は停車したままの車の間を駆けてマンションへと向かおうとした。その瞬間だった。
突如、僕の背後で鼓膜が潰れるほどの爆音が鳴り響き、爆風と熱風でバランスを崩して倒れ込む。



「わ、わァァァァあああぁぁぁ!!!た、助けてくれぇぇぇぇ!!!!」



再び聞こえてきた犬田の叫び声に、急いで立ち上がり振り向く。
そして、僕の目の前には想像を超えた非現実的な光景が待ち受けていた。
「な……なんだ…あ…………れ……」





国会議事堂を背景に、大通りの上に浮かぶ謎の人間。
不気味な暗い青光を放ち、僕と犬田を交互に見ている。しかし、あれは本当に人間なのか。
白い着物の様な服に身を包み、死人の様な白い肌、白い髪、そして蒼い目。明らかに人であって人ではない。
「ひ、樋口!!助けてくれ!!!」
地面を這いつくばって必死に逃げようとする犬田に駆け寄り、再び肩を貸して一緒に逃げようとする。
「す、すまねぇ……あ、あれは何なんだ!?」
「分かりませんよ!!とりあえず、逃げた方が良い!!!」
そうは言っても、人を抱えて逃げているために距離が一向に縮まらない。僕はふと振り向き、唖然とした。

浮いていた‘人間らしき生き物’は、両手をこちらに向けて何かを放とうとしていた。

「や、やばいかも……急いで!!」
僕は犬田に言うと、必死に前へと進む。犬田も振り向くことなく状況を察知し、片足で必死に進む。







『……哀れな人類よ。永遠の時を迎えよ。』







聞こえてきた雑音混じりの男性の声。僕と犬田が後ろを振り向いた瞬間、青光の球体がこちらに向かって飛んでくる。
避ける場所などどこにもない。辺りは車が並んだ大通り。



「もういい!!車の後ろに隠れろ!!!」



ダメ元で、僕は犬田の指示に従い、大型トラックの後ろに隠れた。