ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: マンデルブロの傍観者 ( No.1 )
日時: 2011/06/18 13:23
名前: ロジック豆腐屋 ◆NQvQVKeIHQ (ID: 3CNtvX8U)
参照: 荒唐無稽なロジック豆腐屋

Clock1 不完全的ヴィスワナス


蒼穹。とは真逆な天候が人々の頭に過る。
傘を差し、雨の対策をする人が多い中、彼は対策方法を取らなかった。
雨を受け入れるかのように、天に手を挙げ……そして目を瞑った。
実に不可解な行動だ。何かの実験か?それとも、何かが来るのか?それは理解できない、誰にも。

「……神は私達を見捨てた!バベルの塔にて、神の命、頂戴致す!」
…意味が分からない。
此処は町の中心。一番視線が集まる“中心”で、意味の分からない事を叫び始める人間は、もちろん気持ち悪がられるに決まっている。
しかし、意味深な単語を放った点については興味深い。バベルの塔?この大陸に存在する塔といえば、ハウスドルフとの国境に位置するアネルクの塔だが…
孰れにしろ、彼の発言は常人には理解できないという事なのか?

「命運は我らにかかっている!ラグナロクの剣を手にした者に、永遠の栄光を授け————」
再び不可解な単語が飛び出した、と思った直後の出来事だ。
突如現れた雷光が、槍の様に“彼”にへと突き刺さる。
黄色い衝撃波は人々を圧倒させ、冷たい視線を浴びせていた人間をその場から立ち去らせた。
しかし、私はこの様な事に怯えるほど軟ではない。これ以上に恐怖を味わっているからこそ、冷静に対応できる。
だが…バベルの塔、ラグナロクの剣。彼が口ずさんだ単語は、聞いたことのないものばかり。
恐らく彼が口ずさんだ単語を追及しているのは私だけだろう。他の人々は遠巻きに目をそらしているからだ。

私はこの目でその状況を見た。雷光を浴びた彼の姿は、既に消失していたのだ。
瞬間移動?空間操作?どんなイリュージョンでも不可能だった、瞬間移動をこの目で見たのだ、何が起きた?これは、魔法か?。
この時だけ、異常に判断力が衰えたのを私は確認する。科学では判明できない謎の存在を今まで一蹴していたが、それはこの出来事で終わりとした。
実際に理解できない謎を目視し、その事に対して深く考える気になれたのは、幸いだろう。
それから人生は狂い始めたと言っても過言ではない。