ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 異世界少年。-届いた叫び- ( No.5 )
- 日時: 2011/06/23 21:25
- 名前: くっきー (ID: G2ENsTvw)
第三話 「別人」
ギュッと目を瞑っていた羅羽は震える手で胸の心臓あたりを触った。
・・・・あれ?
突き刺さっているはずのナイフがない。痛みも感じない。
ってことはあたし、生きてる!?じゃあさっきの血は——!?
羅羽は目を開け、目の前で起きていた出来事に驚いた。
「え・・・ッ」
口から驚きの声が出る。
目の前には、男の子が羅羽に突き刺そうとしたナイフを素手で握っている銀髪の少年がいた。
背をこちらに向けているため顔は見えないが、その少年の手、右手は真っ赤だ。血で染まっている。
どういうこと・・?
羅羽は手で口を押さえ、その場にヘナヘナと座り込んだ。
「ったく・・・・」
舌打ちに近い声で少年は呟いた。
聞き覚えのある声。この人知ってる。だけど・・誰だったっけ・・・・?
「邪魔、どけ。殺す」
男の子の口から出た声はしわがれた老人みたいな声だった。キッと男の子は少年と羅羽を睨み付ける。
その迫力に羅羽の体が硬直した。
恐怖で動けない。怖い。怖い怖い怖いよ!!
少年はナイフを握ったまま奪い取るように手を振り切った。
血が飛び散り、少年が着ている白いブラウスに赤い斑点をつくった。
男の子が後方へ跳躍し、少年との距離をつくる。
「あーぁ・・・・。これで二回目だ」
ため息混じりの声で少年が言った。
そのまま少年は何事も無かったかのように少年に歩み寄る。
「やめろ・・・・来るな・・・・」
そう男の子が言いながら、一歩二歩と後ずさる。
少年と男の子の距離が手を伸ばせば届く距離になったとき、少年は足を止めた。
「うわあああああ!!!」
男の子が狂ったようにナイフを大きく少年に向かって振り落とそうとした。
「危ない!!」
羅羽が叫び、立ち上がろうと手を地面につく。
だが少年は素早くナイフを持っている男の子の手首を掴み、ぐいっと地面の方に引き寄せる。
男の子の顔が地面に向けられたが、男の子はそのまま顔を上にあげ、少年を睨み付ける。
その時少年の片方の何もしていない手首に黒いリストバンドが見えた。
あ・・・れっ・・?あのリストバンドって、まさか・・!?
「はい、サヨナラ。よい子はもう寝る時間だぜ」
そっと少年は囁くように言うと、リストバンドを付けている方の腕、右手で男の子の頭を指ではじく。
そのとたん、男の子はドサリと倒れ込みそうになった。
男の子の手首を放し、少年は倒れ込みそうになった男の子を支える。
な・・・何。何だったの、今の・・・・。
数秒の沈黙の後、男の子の体の上に黒い林檎みたいなモノが浮かびあがる。
少年はそれをつかみ取ると、はあとため息をついた。
「・・・・ッ、痛ッ」
少年が右手を押さえる。しかしもう、真っ赤では無かった。血が消えていたのだ。
あんなに流血していたのに?どうして・・・・。
ああもう駄目、このまま倒れ込みそう。
羅羽は声を振り絞り、少年に問いかける。
「冷木・・?冷木なの?」
少年は無言のまま、くるりとこちらを向いた。銀髪が月の光で輝く。その髪とは正反対に、少年の目・・血のような深紅をした目は、鋭い光を放っていた。
To Be Cohtihued....