ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 姫は勇者で魔法使い。 ( No.101 )
- 日時: 2011/11/03 22:23
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: Hfcg5Sle)
「サフィール、大丈夫か?」
森を抜け、ある程度走ったところで、クロヌが妾を下ろす。
「大丈夫じゃ。 怪我も無いし、酔ってもいない」
クロヌにブイサインを向け、胸を張りながら、そう言う。
そんな妾の言動を受けて、ミコガミが溜め息を吐く。
「姫には緊張感がなさすぎるぜ……」
うっ……。
間違っていないのが痛い。
「緊張感が無いのはお前らだ。 運良く大丈夫だったが、さっきの奴らに正当防衛という理由を与えるだなんて笑止千万だ」
クロヌが妾を背負っている間、異空間へと収納していた大太刀を再び背負い直しながら冷静に見解を示す。
「……言葉もありません」
オルドルがバツの悪そうな表情で、妾とクロヌに頭を下げる。
よくよく考えると、オルドルは強いには強いが、騎士団に所属しているわけではないから戦場での実戦経験は無いに等しい。
故に、この間も妾やミコガミという味方が側にいるのに、何の警告も無しに銀弾【クイックシルバー】のような周りを全て巻き込むような魔術を使ったりしたのだろう。
「とりあえず、潰せばいいと思っていたけど、それじゃあダメなんだな」
ミコガミも反省の色を浮かべ、そう呟く。
彼の専門は隠密機動だし、まともな実戦経験はやはり少ないのかもしれない。
「当たり前だ。 危機管理が出来ない奴はすぐに死ぬぞ」
クロヌがフォローを入れることなく、鋭く言い放つ。
この中では騎士団に所属しているクロヌが、一番実戦経験を多くしている。
つまり、戦闘となればクロヌが一番頼りになるということじゃな。
「それから、サフィール!!」
「な、なんじゃっ!?」
突然、クロヌが妾の名前を大声で叫ぶ。
釣られて、思わず妾も大きな声で返事をする。
「お前が一番弱いんだから、オルドル達が叱られてるのを見て、ドヤ顔をするな!!」
クロヌがここ最近で一番の鬼気迫る表情を浮かべて、妾に怒鳴る。
「ですよねー」
そんな形相に圧されて、思わず後ずさりながら情けない返事を返す。
オルドルの説教は聞き飽きたが、クロヌの説教は基本的に相手の身を案じてのこと。
今回のも例から漏れることなく、『負け戦をするな』ということを伝えたいらしい。
なんとも不器用な奴じゃのぅ。
言われてみれば、妾は本当に何も出来ないのぅ……。
せめて、自分の身くらいは守れるようにならなくては、役立たず——いや、それどころか足手まといになってしまう。
「クロヌ、オルドル、ミコガミ。 頼みがあるのじゃが」
クロヌたちに妾の決心を伝えるために、彼らの名を呼ぶ。
すると、3人がすぐに振り向く。
うむ、とりあえず、聞く気はあるようじゃな。
「妾に——魔術の使い方を教えて欲しいのじゃ!」
3人に向かって、自分の意志をストレートかつ簡潔に言う。
「随分、唐突だな」
クロヌが「どうせロクなことを考えてないんだろ」というような表情を貼り付けて言う。
「失礼なっ! そうではなくて、妾は汝らの戦闘に役にたつようなものを覚えたいのじゃ!!」