ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

姫は勇者で魔法使い。 ( No.102 )
日時: 2011/11/05 16:35
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: Hfcg5Sle)

「断る」
「あうっ!? 即答!?」

クロヌが妾の決意の言葉をバッサリと斬る。
まさかこんなにストレートに否定的な言葉が返ってくるとは思っていたから、心が痛い。

「腕の確かな奴は力量で切り抜けられる。 そもそも自信の無い奴は逃げるから、死なない。 下手に自信を持った奴が真っ先に死ぬぞ?」

……全くその通りじゃな。
自分が言い出したこととはいえ、他の人からの冷静な指摘を踏まえると「妾が戦えるようになればいいじゃん!!」というものは愚策この上ない。

「ところでさ」

キョロキョロと周りの地理を確認しているミコガミが話題を変える。

「……ここ、どこ?」

言われてみれば、それが一番最初に持つべき疑問じゃな。
ミコガミと同じように一通り、周りを見回してみる。

「……とりあえず、移動しましょうか」

唖然とする妾の横で、珍しく驚いているオルドルが提案する。
そのアイデアは最も良いものであることには間違い無いが、問題がある。

「リアル背水の陣なんだが、出来るのか?」

妾らは先の撤退後、崖の近くに出てしまったため、後方には移動できない。
そうなれば、横か前に移動するしかないのだが、困ったことに残った道は獣道だったらしく全て狼やら熊だとか大型の動物達が取り囲んでいる。

ここまで大量の動物に囲まれるまで気がつかない妾らも妾らじゃけどな……。

「クロヌ、危機管理云々はどうしたのじゃ? あ、あれ?」

さっきまで危機管理について説教をしていたクロヌを呼ぶ。
しかし、自分のすぐ近くに立っていたはずのクロヌが見当たらない。

「早まっちゃダメだぜ!!」

ミコガミが慌てた様子で崖の方に向かって叫ぶ。
その方向に視線を移すと、崖から飛び降りようとしているようにしか見えないクロヌがいた。

って、ぬあああっ!? 彼奴は何をしようとしておるのじゃ!?

「何を言ってるんだ? この高さから落ちても、死なないだろ。 ……サフィール以外」

クロヌに続いて、ミコガミも崖下を覗き込む。
周りの獣達はオルドルの得物を警戒しているのか、はたまた単純に特に攻撃してくる様子の無い妾らの動きを見ているのか、襲ってくることは無い。

「あっ、本当だ。 オルドル、姫、ここから行くぜ!! 下は砂浜だし、緩衝用の魔術を使えば全く問題ないぜ」

ミコガミがオルドルと妾を呼ぶ。
念の為、クロヌが最初に飛び下り、安全を確認する。

読み通り、大丈夫だったらしくテレパスで『続け』というような内容のことを伝えてきた。
ミコガミ、オルドルがクロヌに続いて、立て続けに飛び降りる。
もちろん、無事に着地できたようだ。

さて、次は妾の番じゃな。

ぬ……? 何か忘れているような気がするのじゃが……。

すると、突如、背後から獣達の唸るような大きな声が聞こえた。
どうやら、自分達より格上で下手に出だし出来なかった3人が消えたお陰で、格下の妾を食えるぞ、という意味らしい。
間違いなく、妾は敵ではなく食べ物のカテゴリーに分類されておる……!!