ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 姫は勇者で魔法使い。 ( No.106 )
- 日時: 2011/12/26 20:38
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: DWh/R7Dl)
- 参照: やっとこさ、ハイペース更新ができそうです♪
「しょうがないし、家に連れてくか。 お前ら、寝床はあるのか?」
翔が妾達に問いかける。
ミコガミが首を横に振ったのを見てから、翔が先ほどの森の方へと歩き出す。
「ついて来い。 少しの間だけだが、泊まっていけばいい」
翔が屈託の無い笑顔でそう言った。
「翔ってばお人好しなんだから。 そこも良いんだけどね!!」
忍が鼻血を垂らしながら、こちらも輝かんばかりの笑顔を浮かべる。
2人とも素晴らしい笑顔だとは思うが、明らかに質の違う笑みだということはよく分かる。
————
翔に付いて森の中を近道をしつつ進んでいくと、先ほど、凸凹二人組に遭遇した場所に出た。
翔達は何ら危険を感じていない様子で、進んでいく。
「兄様、おかえりなさーいっ!」
すると、忍の首に妾よりも一回り小さく、明るめの茶髪が特徴的な少年が飛びつく。
首からなってはいけない音がしたことなど気にも止めず、茶髪の少年を引き剥がし、地面に叩きつける。
「翔、お菓子は?」
首が有り得ない方向に曲がっている茶髪の少年が、地面に寝ころんだまま、翔にお菓子を要求する。
翔が「ちょっと待ってくれ」と言ってから、異空間に繋がる穴を開き、そこからお菓子が入っていると思わしき茶色の紙袋を取り出す。
「わーい!! ありがとう!」
茶髪の少年が何事も無かったかのように立ち上がり、翔から袋を受け取る。
すぐさま袋を開け、中身を物色し始め、割り箸に刺さった半透明で赤色のキレイなガラスのような球体を取り出す。
ガラスのような球体についた保護用のビニールとそれを縛っているモールを外し、嬉しそうな表情で球体を舐める。
「クロヌ、彼奴は何故、ガラスを食べておるのじゃ?」
「俺にも分からん。 今まで、ガラスを食ってる奴なんて見たことないからな……」
クロヌに尋ねてみたものの答えは得られなかった。
「……そうか、オレ以外は小さい頃から宮廷暮らしで、日本に来たこと無いんだもんな。 あれはガラスじゃなくて、飴だぜ。 リンゴ飴っていう名前で、縁日とかの出店によくあるんだ」
ミコガミが茶髪の少年が食べているガラスのような球体の説明をしてくれる。
どうやら、これのことをミコガミ以外が知らなかったのは日本特有のものだったからのようだ。
「縁日や出店とは何じゃ? それで、あのガラスはリンゴの味がするのじゃな!?」
説明に出てきた知らない単語を聞いてから、ガラスのような飴についても尋ねる。
リンゴはかなり好きだし、リンゴ飴も是非とも食べてみたいものじゃな。
「縁日はお祭りで、出店はそこに出てる店のことだ。 リンゴ飴って言っても、見た目がリンゴなだけで、大概はスモモとかだぜ?」
表情で考えていることを悟ったミコガミが言う。
「スモモ? なんじゃ、それは?」
そうミコガミに問いかけると、驚いた顔になる。
しかも、ミコガミのみならず、翔や茶髪の少年も物珍しそうな目を向けてきた。
「……一つ、分けてあげようか? さっきも物欲しそうだったし」
茶髪の少年が可哀想なものを見る目で、袋から取り出した新品のリンゴ飴を差し出す。
ちびっ子にまで気を使われるというのは、なかなかどうして複雑な気分じゃな……。
「ん……? さっき?」
思うところあって、ちびっ子にもう一度目をやる。
茶髪、小柄で幼い体型と顔立ち、飴、服装……間違いない。
「汝、さっきのちびっ子か!?」
「え? 今更?」