ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 姫は勇者で魔法使い。 ( No.110 )
- 日時: 2011/12/31 11:01
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: ADRuIPKx)
「メアクとサフィールは知り合いなのか?」
翔が茶髪の少年——メアクに視線の高さを合わせる形でしゃがみ込みながら尋ねる。
「うん。 あのね、さっき、モアクに威嚇されてた人達だよ」
モアクというのは恐らく先の日本刀を携えていた青年のことだろう。
「悪いな、ここに普通の人間が入り込むことがあんまりないから……。 あるとしても、基本的に『ハンター』だし」
翔が本当に申し訳なさそうな表情で謝る。
「いえ、お気になさらず」
オルドルが人当たりのいい笑みを浮かべながら、さりげなく翔の腰に左手を回す。
翔は若干嫌そうにしているだけで問題無さそうなものの、忍の方が何かに覚醒したような危険な表情をしている。
まぁ、自分の身内が初対面の人間に痴漢というかセクハラをされたらこのくらいの表情を浮かべるのが普通じゃろうな。
ちなみに、ミコガミは昔、女の子と勘違いされよく痴漢やセクハラ行為にあっていたのだがことある毎に相手を背負い投げをして撃退いたらしい。
クロヌによるとセクハラをされたことに怒っていたというより、女の子と間違われたことに怒っていたらしい。
「ちょっと!! 俺の弟に触らないで!!」
忍がオルドルを突き飛ばし、翔を自分の後ろに立っていた雨音に預け、臨戦態勢に入る。
「翔、やっぱりこいつら連れていくの止めよう? このちんちくりんはともかく、他は危ないよ」
忍が臨戦態勢を崩さずに翔に言う。
ちんちくりんというのは妾ではあるまいな……?
「あ、後、そこの銀髪もついて来ていいよ。 他は置いていこう?」
忍がそう続けた。
明らかに弱そうな妾はともかく、何故に武器を背負っているクロヌに許可をだしたかったは疑問だ。
「ですが、私やミコガミも同行しなくては……」
オルドルが粘ってみるものの忍は口を開かずに踵を返す。
「お前、本当にただの人間? よく分からないけど、嫌な匂いがするんだよね。 そっちの白髪は『御子神』でしょ。 人間性に問題は無さそうだけど、簡単に入っていいよ、とは言い難いタイプだから」
少し間をおいてから忍が妾達に背を向けたままそう言った。
同時に彼の指先から白煙が上がる。
「雲隠【夜半の月】」
忍が魔術発動の文言を唱えると彼の指先から細々と上がっていた煙が一瞬のうちに爆発的に広がる。
これではどこに誰がいるのか、分からぬ……!!
煙の影響で目が潤み、視界がブレる。
そんな中、突然、手首をグイッと引っ張られた。
「こっちだよ」
煙を我慢しながら少し目を開くとちびっ子……ではなくメアクが妾の手を引いていた。
彼の反対の手にはちゃっかり煙に目を馴らし終えたと思しきクロヌの手を握られている。
「にゅーんと飛ぶよ!!」
メアクが子供特有のよく分からない擬音を言うと同時に地面を蹴り、クロヌが引きずられないギリギリの距離を低空飛行する。
ヤバい、酔いそうじゃ……。
「姫様ッ!!」
オルドルが妾に向かい叫んでくるのが聞こえるが、今このタイミングにメアクを振り払えば地面に叩きつけられてしまう。
故にあまり軽率な行動は出来ない。
そして、されるがままに引っ張られていく————