ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 姫は勇者で魔法使い。 ( No.111 )
- 日時: 2012/01/02 18:22
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: ADRuIPKx)
- 参照: 第3章、突入です!!
「客人だし、あの2人にはそれなりの待遇をするから安心して。 バイバイ」
煙の中から忍とかいう変態がそれだけ言い残して、姫とクロヌを連れ去って消えた。
「うぬああああッ!! 何回回っても結界に阻まれて、姫とクロヌの居場所に辿り着けないぜ!?」
元々気が短いオレだが、久しぶりに感じた苛立ちに思わずシャウトする。
オレの横で同じく姫を探しているオルドルが肩をすくめてこう言った。
「外の弱い結界に加えて、この幾重にも張り巡らされた強力な結界……。 恐らく、姫様達を私達の独力で見つけるのは不可能でしょう」
オルドルが言ったとおり、どうやらオレ達が運良く破れた結界は彼ら敵には申し訳程度のものだったらしい。
姫たちを探しに行くにはバカみたいに強く張られた結界を破らなアクテはならないらしい。
しかも、よりによって面倒くさい奴と取り残されたし…………。
踏んだり蹴ったりだぜ……。
「どうかしましたか?」
心情を読み取ったのかオルドルがニコニコとした笑顔を浮かべて、オレの顔を覗き込む。
「い、いや、なんでも無いぜ」
本当のことを言うとそれこそ厄介なことになるから、否定しておく。
「では、シャルロット様にご報告しましょう。 そのために、とりあえずは寝床の確保をしましょうか」
そうか……クロヌと姫様がいないからこいつと2人っきりで過ごさなくちゃいけないのか……。
どうせ姫様は別室だけど、クロヌがいないというのは中々デカい。
「……取って食ったりはしませんから、安心してください」
オルドルがそう言って結界の外へと歩き出す。
ここはついて行かないとマズいよな……?
「シャルロット様に報告してどうするんだ? 誰かを派遣してもらうのか?」
「えぇ、結界を破るのが得意な方がいるでしょう?」
オレの質問にオルドルがすぐに返事をする。
結界を破るのが得意な奴……?
そんな奴、いたっけか?
「まぁ、来てからのお楽しみとしましょうか」
オルドルが再び歩みを進める。
勿論、後に続いてオレも歩き出す。
うーん……。
前々から思ってはいたのだが、オルドルは素顔が全く見えないのが嫌なんだよなぁ……。
姫様はあの性格だし、クロヌも自然体でいることが多いからこちらもリラックスしていられる。
だけど、こいつはいついかなる時も弱味を見せたり腹を割って話すということを見たことがない。
オレは隠密機動という仕事上、ある程度だが相手の心情を読むことが出来る。
それらは相手の表情や声の抑揚、仕草などから探っていくものであるから必ずしも合っているわけではない。
でも、あいつは常に本心を隠した行動をしているから殊更に探りがたい。
「————ダメですよ」
再びこちらを振り向いたオルドルがそう言った。
「私から何かを読みとることは出来ません。 そういうように訓練されてきましたから」
……むしろ、こっちの心情が読まれているという訳か。