ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

姫は勇者で魔法使い。 ( No.119 )
日時: 2012/02/08 21:01
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: pvHn5xI8)

「ミコガミ、シャルロット様に連絡しておきましたよ」

なんとか街に出て、宿の確保に成功したオレ達だが、1人用の一室しか取れずやむなくオレはソファで寝ることになった。
オルドルは「一緒の布団で寝ましょう」とかふざけたことを抜かしていたが、そんなものはスルーだ。

「飯はどうするんだ?」

衣食住で唯一欠けている食について考える。
携帯食料の量には限界があるし、お金は姫様よりもオレ、オレよりもオルドル、オルドルよりもクロヌが多く持っている。
姫様に大金を持たせるのは危険、とクロヌが判断したわけだが、それは正しいと思う。

二手に分かれてしまった今、平均を出せば二組の持っている金額はだいたい同じだが、いちいちオルドルに相談しないとまともに動けないというのは面倒くさい。
いや、もし何か有ってこいつとも分かれるようなことがあれば、オレは猪や鹿を捕まえるところからスタートするような生活を送ることになるだろう。
そうなった場合は姫様とクロヌを見つけ次第、一旦とんぼ返りするのも手だな。

「その辺の安い定食屋で食べましょう。 まだまだお金はありますが、最低限以上はあまり遣いたくないですしね」

オルドルが苦笑いを浮かべ、コートと靴を脱ぐ。

「お前、宮廷育ちなのに定食屋に行ったことがあるのか?」

オレは貴族や皇族、騎士の家系じゃないからその手の店に育ててもらったと言っても過言でないほどお世話になっている。
対して、皇族である姫様や中流貴族の出であるクロヌは舌が肥えている上に定食屋の存在を知らない可能性がある。

まぁ、クロヌは騎士団の仲間との付き合いで入ったことがあるだろうけど。

「一度だけですがありますよ。 小さい頃の話なのであまり詳しく覚えていませんが、エビフライを食べた記憶があります」

オルドルが珍しく素に近い優しげな笑みを浮かべて言った。
エビフライという単語自体久しぶりに聞いたなぁ……。

やっぱりあの金持ち家系の2人は無駄に高いエビ——車エビだっけ?
そういうようなやつで作ったものしか食べたこと無いんだろうなぁ。

「少し早いですが、行きますか? 出来れば、タルタルソースがかかっているエビフライがある店がいいです」

オルドルがはにかみながら言う。
こいつが個人的な欲求を他人に言うなんて、ツチノコ発見並みにレアなんだけど……。

というか、初めて見た素の部分が『エビフライ食べたい』というのは何故か複雑な気分だ。

「大概、エビフライにはタルタルソースかかってると思うぜ」

たまにデミグラスソースやマヨネーズがかかっているが、オレが知る限り、大概の人はタルタルソースを好む傾向にあると思う。

「じゃあ、少し早いけど昼飯食いに行くか!」