ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 姫は勇者で魔法使い。 ( No.120 )
- 日時: 2012/02/09 21:10
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: pvHn5xI8)
- 参照: ぼっちなう(´・ω・`)
「うぬ……?」
忍が用意してくれたものは何とも貧相な食事だった。
妾は庶民よりも明らかに高いものを食べているということは自覚しておったが、庶民はここまで貧相なものを食しておるとは思っていなかった……!!
「兄様、おかわりは無いの?」
メアクが子供らしく目を輝かせながら忍におかわりの有無を尋ねる。
忍はというと、メアクなど眼中に無しと言った態度で雨音の隣に座り、彼の分のカレー皿とスプーンを奪い取っていた。
何をするのか気になって見ていると、カレーを一口だけすくい取り雨音の口に近づける。
「はい、あーん」
忍は目を輝かせて雨音が食いつくのを待っているが、雨音はそれを避けたいようで隣に座っているメアクを膝に乗せた。
メアクが自分の真横に差し出されたカレーに食いつかないわけがなく、そのまま、忍が差し出しているスプーンをくわえる。
忍が本気で嫌そうな顔をしているが、どこをどう見たって自業自得だし、スルーでいこう。
「兄貴、瑠果達は?」
翔が忍に問いかけると、忍が嬉しそうに身を乗り出す。
「3人とも部屋にいたんだけど、どうしても兄さんに入られるのが嫌みたいで。 声はかけてきたよ」
「気持ちは痛いほどよく分かるが……。 念の為、もう一回呼んでくる。 メアク、俺の分は食べるなよ?」
翔が瑠果とやらを呼びにいくために立ち上がり、メアクに釘を刺す。
メアクは「はいはーい」と軽くも元気な返事を返す。
「ねぇ、サフィールはドライカレー食べないの?」
メアクが自分の食事を食べ進めながら、全く口を付けていない妾の皿を見て問う。
「お前、いくら金持ちだからってカレーくらい食べたことあるだろ」
既に皿に米一粒も残っていないクロヌが言う。
クロヌの食べっぷりを見た忍が少しだけ嬉しそうな顔をする。
自分の作った食事を美味しそうに食べてくれるというのは作ってもらう側としては嬉しいことだ、というのは分かるのじゃが……。
「これは何という料理なのじゃ?」
匂いからしてカレーの仲間だというのは分かるのだが、ご飯が黄色い上にルーも妙に固まっている。
こんな食べ物は産まれてこの方食べたことがない。
「ドライカレーだよ。 知らないの?」
おかわりのために立ち上がっていたメアクが不思議そうな顔をする。
「カレーは食べたことがあるのじゃが、ドライカレーは無いのぅ……。 妾の食事には母上や妹が苦手なものは出ない故。 干しとかドライと名が付くものはどうにも……」
妾が事情を話すと忍が自分のスプーンを置き、ツカツカと妾の背後に立つ。
そして、妾のスプーンを掴みドライカレーをすくいあげ、ぐいぐいと口に近づける。
「人が優しさで急な来客でもご飯を作ってあげたのに……」
忍が怒りと悲しみの中間的な声でしゃべる。
うっ、正論なだけに心が痛い……!!