ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

姫は勇者で魔法使い。 ( No.125 )
日時: 2012/02/14 22:07
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: pvHn5xI8)
参照: ぼっちなう(´・ω・`)

「あら、遅かったじゃない」

私が部屋に入ると、美しい黄緑色のドレスを身に纏った女が待ち構えていた。
彼女は長テーブルの誕生席で偉そうに艶めかしい脚を見せつけるように組んでいる。

「何でアタシがアンタとの約束を優先しなきゃいけないんだよ」
「そう怒らないで頂戴。 ミス・か……」

女が私の名を言い切る前にギロリと睨みつける。
こいつの人を見下した態度も気にいらねぇ。

「あらあら怖い怖い」

彼女は薄ら笑いを浮かべ、ふざけた様子で両手を上げる。
いちいち癪に障んな……。

「舐めてっと殺すぞ。 っつーか、他の奴ら来てないのかよ」

部屋に入る際、周りをチラッと見回したがこいつ以外は人っ子一人として見当たらなかった。

「えぇ、私、人望が無いみたいね」
「分かってんじゃねぇーか」

テーブルの上に予め用意されていた無駄に豪華な食事に手をつける。
とりあえず、手近にあった骨付きチキンにかぶりついておく。
腹立つことにめちゃくちゃ旨い。

「遅れちゃっちゃけんど、ヌカバちゃん登場なのにゃ〜」

えらくゴチャゴチャした口調のロリボイスと同時にうさぎの耳がついたポンチョを羽織ったピンク色の目に金髪ツインテールの幼女が現れる。
ある一定の人間にしか受け入れてもらえそうな奴だ。

「シャーたん、くりたん、元気してたけん?」

ツインテールが安定しない口調で話しかけてくる。
アタシの名前は栗栖くるすであって、くりと読むわけでは無いが、何を言っても会話が成立しなかったから諦めた。

「えぇ、それはとても」
「別に普通だ」

適当に返事をしておく。
ヌカバは何故か満足そうな表情でその場でくるくると回転する。

「おい、アタシが造った奴は正常か?」

回転し続けているヌカバ越しに気になっていたことを尋ねる。

「ちゃんと稼働してるわ。 でも、今は『おつかい』に出しちゃってるからいないけれど」

彼女が相変わらずの薄ら笑いを貼り付けた表情で答える。
『おつかい』に行けるっていうことはちゃんと従順な性格に調整出来てたみたいだな。

本当は過去にこれ以上ないくらいに上手く出来たものもあったのだが、そいつはアタシや機械の監視の目を盗んで脱走したから既にいない。
しかも、一般人なら殺すなり何なりして奪うことが出来たのに、こちらがおいそれと手を出せない化け物に保護されてしまった。
あの時の悔しさは未だに忘れられない。

取り返せるなら、今からでも取り返したい。

「シャーたん、他の3人はおいといてー、先に始めようず」

ヌカバがピョンピョンと跳ねながら、口を尖らせて言った。

「そうね。 これ以上待ってもしょうがなさそうだわ。 とりあえず————」

彼女が自分の目の前に置かれているカルボナーラをくるくると巻きながら、吐き捨てるように言った。
カルボナーラを口に運び、頬張る。
一息おいてから、彼女が再び口を開く。

「今、賽国と戦争中なのを利用してあの子を暗殺しましょう」