ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 姫は勇者で魔法使い。 ( No.127 )
- 日時: 2012/02/27 18:44
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: pvHn5xI8)
- 参照: ぼっちなう(´・ω・`)
「ミコガミ。 ……あぁ、もう寝てしまいましたか」
時計の針に目をやると長針が3を指していた。
さっきまではミコガミも起きていたのだが、耐えられなかったらしく眠っている。
「少々出かけて参りましょう」
ミコガミが起きて捜索を始めてしまったら厄介なので、枕元に書き置きを残しておく。
「【空間転送】」
魔術を使い、ミコガミを起こさないように移動する。
————
「遅い」
私が目的地についた瞬間、雷にでもあたったかのような鋭い衝撃が顎に走る。
「ぐっ……申し訳ありません」
咄嗟のことにえづきかけたのを立て直し、即座に謝る。
「おいおい、壊すなよ? そいつは手持ちの中で一番完成度が高いんだからな」
テーブルの上にある食事にがっついている『栗栖』様がそう言った。
「おい、アタシの『息子』には接触できたか?」
「少なくとも、リストの中の一つには接触できたんでしょうね?」
2人が同時に問うてきた。
「えぇ、【不知火の血族】に接触することができました。 栗栖様の問いに対しては、息子様の名前が分からないことには……」
真に間違いのなさそうなことを答える。
「ふーん。 アタシの息子の名前は相斗……だったかな? アタシがつけてやった名前では名乗ってねぇから、合ってるか分からねぇけど」
相斗……?
あの二重人格のような青年がそう呼ばれていたような気がする。
「もしや、その彼は二重人格でしょうか?」
「あ? 違ぇよ」
食事の手を止めない栗栖様が否定する。
ということは、私の聞き間違いだったということでしょうか……?
「あいつは二重人格じゃなくて、1つの身体の中に本当に2人いるんだ」
「どういうことなのにゃ?」
相変わらず毎回特徴が変わる不思議な特色を持ったしゃべり方でヌカバ様が問う。
「そのままの意味だ。 相斗と雨音は一つの身体に閉じ込められてるだけで、別々の人間なんだ」
栗栖様がニンマリと不敵な笑みを浮かべ、語る。
「2人を相斗の身体に閉じ込めたのはアタシ。 雨音の身体は燃やしちまったから、やつは元の身体に戻ることが出来ない」
そして、宿を貸してくれている相斗を助けようとした雨音からしっぺ返しを受け、逃げられた——というところなのだろうが、口に出すと何をされるか分かったものじゃないから黙っておく。
またよく分からない薬品漬けにされたいとは思わない。
「相斗も欲しいが、アレもいいよな。 あー、なんつったかな」
栗栖様がガサツに頭を掻きながら、目星をつけた相手を思い出そうとしている。
「そうそう、思い出した」
そして、栗栖様が右手に握ったフォークの刃先をこちらに向け、聞き覚えのある名前を言った。
「岡崎忍」