ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 姫は勇者で魔法使い。 ( No.130 )
- 日時: 2012/03/05 23:12
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: pvHn5xI8)
詳しいことは分からないが、先の電話は翔殿の友人の「晩飯たかりにいくから」という宣言だったらしい。
忍殿の知り合いでもあるらしく、翔殿から事情を聞き、快諾していた。
「あれ? 父さん、このちんちくりんは何?」
「本当だ。 このアホ毛はひっぱっていいの?」
買い物から戻り、今泊めてもらっている翔殿達の家のリビングで休んでいると、突然現れた青年2人に絡まれた。
片方は肩よりも上の長さの黒髪に紫色の目で、口調や動作から活発そうな雰囲気を漂わせている。
もう一方は、ちょうど肩のあたりまで伸ばされた薄い茶色の髪にピンクがかった茶色の瞳、こちらは柔らかくて優しそうな雰囲気が漂っている。
華奢な身体と相まって女々しく見える。
「引っ張っていい訳ないだろ」
翔殿が薄い茶色の髪の方の頭を軽くはたく。
2人とも翔殿より背が高いため、背伸びしてはたいたわけだが、翔殿の足がプルプルしていて全く恐くない。
「父さん、可愛いっ!」
黒髪の方が翔殿に飛び付こうとするが、軽くかわされる。
なんだか此奴は忍殿と同じような感じがするのぅ。
「なんで避けるのっ!?」
「なんで抱きつかれなくちゃいけないんだ?」
「むっ」
翔殿の冷たいリアクションが気に入らなかったらしい黒髪の青年が、子供のように頬を膨らませる。
「あっ、枢が起きたみたいだよ」
茶髪の方が廊下に浮かんでいる本と大きめの熊のぬいぐるみを指差す。
…………え?
「ちょ、え? 汝の家には幽霊でもおるのか!?」
だって、本とぬいぐるみだけが宙に浮いておるぞ!?
これが心霊現象というやつなのか!?
「違う。 まぁ、夜になったら見えるようになるだろ」
翔殿が適当に答える。
夜に見えると言えば、幽霊というイメージが強いのじゃが……。
「兄貴!」
翔殿がどこにいるのかも分からない忍殿を呼ぶ。
そもそも、今、家におるのか?
「どうしたの? このちんちくりんにセクハラされたの?」
どこからともなく現れた忍殿がくまのぬいぐるみと翔殿に抱きつく。
翔殿は嫌がっているが、くまのぬいぐるみの方はむしろ忍殿にすり寄っていっている。
このぬいぐるみは本当に何なのじゃろうか……?
「枢が本読んで欲しいって」
翔殿の話を聞くとすぐさま忍殿がぬいぐるみから本を取る。
本の表紙を見ると……何でじゃろう、段々眠くなってきた。
「枢は勉強熱心だね!」
その本の表紙を見た忍殿がニコッと微笑み、ぬいぐるみの頭よりも高い位置をなでる。
嬉しいのか何なのか、ぬいぐるみが左右に揺れる。
「おい、サフィール。 どうかしたのか」
「ぬああああああッ!?」
「本当にどうした」
唐突に背後から降ってきた声に思わず絶叫してしまった。
「……なんじゃ、クロヌか」
別にぬいぐるみの一派の幽霊かと思ったわけではないぞ?