ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 姫は勇者で魔法使い。 ( No.19 )
- 日時: 2011/07/26 07:57
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: AzZuySm.)
「さっき、『動物のパーツを剥ぎ取れば解ける』って言っただろ?」
「うむ。 確かに、言っておったのぅ」
「それがどういうことか分かりますか?」
ミコガミに代わり、今度はオルドルが問いかけてくる。
「分からぬ」
妾がそう簡単に正解を答えられるかと思ったら、大間違いなのじゃ。
……これは誇ってよいことなのかのぅ?
「敵のパーツに『熊頭』と『猫目』があるでしょう? それを剥ぎ取ろうとすれば、必然的に首を刎ねなくてはならないのですよ」
オルドルが丁寧に説明をする。
このような説明をしてくれれば、妾とて理解をすることは出来る。
「それでか……」
「はい、姫様にグロテスクなものをお見せするわけにはいきません」
むぅ……。
グロテスクなものを進んでみたいとは思わぬが、どうにも子供扱いされているようで嫌じゃ……。
そんなことを考えながら、窓の外を見やる。
そこではクロヌと【憑獣】を扱う物が、人を嘲笑っているのではないかと思う位に、晴れ渡っている青空を背景に闘っている。
「悪く思うなよッ」
クロヌがそう叫ぶとともに、敵の首目がけて大太刀を横薙ぎに一閃する。
大太刀が首の薄皮を切り裂き、骨を砕く。
大太刀の勢いに負けないくらいのスピードで、刎ねられた首が宙を舞い、その後、重力に引かれるまま落下していく。
「決着か?」
本当に倒せた確信が無いらしいクロヌがミコガミに問う。
首が再生する様子もないし、これで一安心じゃな。
む? クロヌの背後で、兎の目のように赤い光が見えたような気が……。
「クロヌ、まだ終わってないぜッ! 後ろに伏兵がいるッ!!」
「兎頭がおるッ!!」
ミコガミと妾が、鼓膜が破れるのではないかと思うほどの大声を張り上げる。
「うあッ!?」
ミコガミと妾の忠告は一足遅かったらしく、クロヌの短く小さい悲鳴が聞こえる。
「クロヌッ!」
「姫様! 危ないのでお下がりください!」
窓から身を乗り出した妾を、オルドルが止める。
確かに、妾にクロヌを助けられるような力は無い。
それどころか自分自身を守り切れるか、と問われたら否と答える。
だからと言って、クロヌを助けに行けないというのは、歯がゆすぎる。
ここで動かずに、小さいころから多忙な父上と母上の代わりに妾を育ててくれた恩人を見捨てれば、久遠に後悔が付きまとうだろう。
どうせ後悔するのであれば、やって後悔した方がまだ救いようがあるはずじゃ……。
後でオルドルや他の使用人にお小言を喰らうだろうが、クロヌを失うよりかは遥かにマシであるしのっ!!
「【瞬間移動】」
初歩中の初歩である【瞬間移動】の魔術を使い、クロヌがいるであろう窓の真下あたりに移動する。
「姫様ッ!? 何処へッ!?」
まさか魔術を使ってまでいくとは思っていなかったらしいオルドルが、焦燥に駆られたような大声で言う。
「クロヌを助けるのじゃっ! 今なら間に合うやもしれぬ!」