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姫は勇者で魔法使い。 ( No.37 )
日時: 2011/08/10 07:39
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: AzZuySm.)
参照: オルドルの声は小野大輔sなイメージ。

「危ないから、サフィールは下がってろ」

クロヌが大太刀を構えなおしながら、さきほど押しつぶされていた人間と同一人物とは思えない程、真剣な表情と声色で言う。

「妾が足手まと「あぁ、そうだ」最後まで聞け!!」

まだほとんど何も言っていない妾の言葉を遮り、答えたクロヌに怒鳴る。

その直後、先ほど、クロヌに奇襲をしかけてきた伏兵の兎頭の【獣憑】を扱う物が、先と同じく俊敏な動きでクロヌに飛びかかる。

「お前はバカで面白いが、要人な上に、魔術も体術も頭脳もロクに使えないだろうがッ」

クロヌは妾に向かって叫びながら、勢いよく大太刀を振りかぶり、敵の兎頭の首を切り落とす。
兎頭が飛ぶと同時に、切断部から尋常じゃない量の赤い飛沫が飛び散る。

クロヌは大太刀を軽く振り、兎頭を斬った際についた血を払い落す。

「姫様、二回もバカと言われてますよ」

クロヌが仕留めた【獣憑】を扱う物に念のためとばかりにピザカッターを投擲したオルドルが、妾に可愛そうな人を見るような憐みの視線を浴びせながら言う。

「それに気がつかない辺り、流石だぜ」

妾に敵が近付こうとする度に、クナイや忍者刀などの武器を使い、牽制して守ってくれているミコガミが親指をグッ、と立てて言う。

「そうじゃろ? 凄いであろう?」

謙遜せず、素直に胸を張る。
褒められて悪い気がする訳がないし、過度な謙遜はむしろ不快、という話も聞いたことがあるしの。

「……姫様、現在進行形でバカにされていますよ」

なぬっ!?
ミコガミは妾のことを褒めるふりをして、バカにしておったのか……。

「おふざけはここまでにして、雑兵共を蹴散らすぞ!」

クロヌが再び大太刀を構えなおしながら、真剣に言い放つ。

「援護します」
「姫の護衛については、任せてくれていいぜ」

オルドルとミコガミが返事をする。

「剣技【焔の舞】」

クロヌが文言を唱えると同時に、大太刀が炎を纏う。

少し前に、オルドルから教えられたことだが、「魔術や魔法は複合、変形等が可能で、比較的簡単にオリジナルの技をカスタマイズできる」とか言っておったのぅ……。
なんというか、カードゲームのデッキ構成みたいじゃな。

地鳴じなり【大山鳴動】」

クロヌがさっきのとは別の文言を唱えながら、炎を纏った大太刀を地面に突き立てる。
するとそこを中心として、地面が隆起し始め、その表面を深紅の焔が走る。

敵方はその焔と地面が割れる衝撃から逃れるために、魔術を使い、空中へと飛ぶ。

既に死んでいるため、回避することが出来ない兎頭が焔にこんがりと焼かれているのが目に入る。
場違いじゃが、お腹が空いてきたのじゃ……。