ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 姫は勇者で魔法使い。 ( No.43 )
- 日時: 2011/08/13 14:00
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: AzZuySm.)
「クロヌ、敵の足場を消しただけでは、倒したことにはなりませんよ?」
オルドルが少し呆れたような表情で、クロヌに言う。
「言わずもがなッ!!」
クロヌが言いながら、大太刀を地面から無理やり引き抜き、空中へと退避した敵に向かって、ブーメランと同じ要領で大太刀を思い切り投擲する。
大太刀の形状から考えて、ブーメランのように戻ってくるとは思えないのじゃが……。
「ぐあッ!!」
まさか大太刀が飛んでくるとは思っていなかったらしい敵兵の1人がわき腹にモロに喰らい、そのまま吹っ飛んでいった。
敵兵を吹っ飛ばしたにも関わらず、大太刀の勢いは衰えることなく、次々に敵兵を蹴散らしていく。
……クロヌの大太刀には、つくも神でもついているのじゃろうか。
現在、妾たちを囲む敵隊において、【獣憑】を扱える物は先の兎頭だけだったようで、他は生身の人間だ。
大太刀の攻撃の衝撃だけで死に至っても何らおかしくない。
衝撃だけで死ななかったとしても、落下の衝撃が加われば、まず、しばらく動くことは出来ないじゃろうな。
「相変わらず、蹴散らし方が雑ですね」
オルドルが冷静に批評する。
ただ、丁寧な蹴散らし方というものがあるのだろうか。
「オルドル! 後ろに」
「分かっていますよ。 銀弾【クイックシルバー】」
ミコガミの注意喚起に答えながら、オルドルが魔術を発動する。
「うわっ、姫がいるのに、それ使うのか!? 危ないから、少し飛ぶぜ」
ミコガミがオルドルの魔術に巻き込まれることを警戒して、妾のことを抱きかかえ、思い切り地面を蹴り、後ろへ飛ぶ。
その直後に、オルドルを中心として、無数のナイフや銀弾が四方八方へ乱射される。
もしも、ミコガミが退避させてくれていなかったら、妾も敵兵たちと同じようにハチの巣にされていたであろう。
クロヌに雑だとか言っていた張本人がこんな魔術を使うとは……。
クロヌの大太刀投擲と同じく、オルドルのナイフと銀弾も辺りどころが悪ければ即死。
クロヌよりも冷徹な面が伺える魔術じゃな……。
「ひとまず城内に戻るぞ!!」
どういう原理かしっかりと手元に戻って来た大太刀を背負いながら、クロヌが叫ぶ。
「そうですね、姫様の安全が一番ですから」
「そうと決まったら、すぐに戻ろうぜ」
オルドルとミコガミが肯定的な姿勢を示す。
否定する理由がない故、妾も首を縦に振る。
「それなら、走るぞ」
クロヌとオルドルが駆け出すと同時に、妾を抱えたままのミコガミも走り出す。
ひょろっちいようで、ミコガミは力持ちなのじゃな。