ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

姫は勇者で魔法使い。 ( No.5 )
日時: 2011/07/08 20:31
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: AzZuySm.)

「さっきから何なのじゃ、貴様らァァァ!!」

無礼が過ぎる、オルドルとクロヌに叫ぶ。

「いえ、一応、姫様をお守りしたつもりですが」
「何処がじゃっ!! むしろ、怪我を負ったぞ!?」

キョトンとした表情を浮かべるオルドルにキツめに言い放つ。

「俺もだ。 それとも、お前はこれに刺さりたかったのか?」

そう言って、クロヌがちょうど妾がいた位置の壁を示した。
そこには、数本の短剣が刺さっていた。

————って、えぇ!?
何故、こんな危険物が壁に刺さっておるのじゃ!?

「こ、これは何なのじゃ……?」
「短剣ですね」

オルドルが冷静に答える。
妾が聞きたいのはこういうことではないのじゃが、今のは妾の聞き方が悪かったし、もう1度、尋ねてみよう。

「何故、短剣がここにあるのじゃ……?」
「旧作からメイドでも飛び出して来たんじゃないないのか?」
「オルドル、ふざけておるのか!?」

我が城にそんな危険物を壁に突き刺していくようなメイドはいない。
そもそも、「旧作」って何ぞ!?

「姫様、今のは私ではありませんよ?」

オルドルがまたもやキョトンとした顔をする。
言われてみれば、オルドルよりも声が低かったような……。

「お前か、ミコガミ」

クロヌが自分の斜め前辺りの天井を突く。
すると、天井から派手な音をたてて、人が転がり落ちてきた。
不審者を発見したのは功績だが、天井を壊した分、給料は減るだろう。

「痛たたた……。 痛いぜ、クロヌ」
「知るか」

天井から落ちてきた綺麗な青色の髪と目をした17歳程度の少年——ミコガミが、落下した時に打ちつけたらしい腰をさすりながら言った。

「酷いぜ。 それより、向こうはいいのか?」

そう言って、ミコガミが窓のある方向を指差す。
指の動きに釣られるようにして、窓の外に目を向ける。

すると、そこには————

「あれが憑獣か……」

熊の頭に猫の目、狼の腕、更には鳥の羽根がはえた、人間に動物のパーツを埋め込んだような『物体』が短剣を構えて、こちらを虎視眈々と狙っていた。
いや、動物に人間のパーツをはめ込んだ——と言った方が正しいかも知れない。

「アレは分からないことが多すぎるんだよな」

クロヌが面倒くさそうに頭を掻きながら言う。

憑獣は最近、発明された魔術のため、弱点等もあまり見出されていないのだ。
————無論、それを使った際のリスクもほとんど分かっていない。

「あぁ、そうそう。 そいつね、とりあえず、動物のパーツを剥ぎ取れば憑獣は解けるぜ」

ミコガミがさらっと状況をひっくり返すようなことを伝える。

「本当か? それはどこから入った情報だ?」

早すぎる情報に、信用しきれなかったらしいクロヌがミコガミに確認をとる。

「本当だぜ。 情報の出所はオレの戦果」
「そうか。 ならば、よしっ!」

ミコガミからの情報を信用したクロヌが窓の外の『物』に向かい、大太刀を背負い、勢いよく飛翔する。