ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

姫は勇者で魔法使い。 ( No.52 )
日時: 2011/08/18 22:43
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: yjIzJtVK)
参照: 鑑定のアドバイスを受けて、描写を少し増やしてみました^^

「囲んできたのが雑兵だったから運良く助かりましたが、もし、強い奴が来ていたらどうなっていたか分かりますか?」

さっき「小言は後で聞く」と言ったのをしっかりと覚えていたらしく、現在、妾は説教をくらっている。

「クロヌの挙式が行われる」
「……百歩譲っても、そこは葬式でしょう。 クロヌは誰と結婚するんですか」

オルドルが心底疲れたような表情で、ため息をつく。

自分で言ったこととはいえ、説教をくらうのが楽しいわけがない。
とんでもないドMや「オルドル、愛してる」という人であれば、話も変わってくるのだろうが、妾は残念ながらどれにも当てはまらないしのぅ。

「おい、オルドル。 女王陛下に呼ばれた。 ミコガミとサフィールも連れて行くぞ」

クロヌが今まで座っていた椅子から立ち上がり、右手に持った黒色の携帯用通信機器を上に掲げて、連絡が来たことを示す。

このタイミングでの呼び出しということは、お説教かのぅ……。
この呼び出しのおかげでオルドルのお説教は中断されたものの、新たに母上のお説教が始まる可能性が高いため、あまり嬉しくない。

「お前もだぞ、ミコガミ」

「オレは関係ないぜ」と言わんばかりの表情のまま、薄手の布団をかけ、ソファで眠っているミコガミを、クロヌが大太刀の切っ先で軽くつつく。

よくよく考えると、ミコガミが使っているソファも布団も妾の物なのじゃが……。
ソファはともかく、年頃の娘の布団を勝手に使うという行動は許されるのかのぅ……。

「……母さん、今日は火曜日だぜ」

ミコガミがムニャムニャと寝言を言う。
火曜日だと思っているのならば、母上が起こしてくれている理由が分かるだろうに。

「ミコガミ、ふざけてないで起きてください」

今度はオルドルがミコガミを起こすべく、声をかける。

「……父さん、今日は火曜日だって言ってるだろう」

やはり起きる気配はなく、寝言を言う。
どうしても寝ていたいらしく、最初妾たちのほうを向いていたミコガミが、現在はソファの背面の方向に顔を向けている。

……この感じからして、家族は苦労しているに違いない。
というか、ミコガミの母上は息子を起こすために、刃物を持ち出すのか……?

「クロヌは母上、オルドルは父上だと思われているようじゃな。 どちらかと言うと、逆だと思うじゃがのぅ……」

クロヌとオルドルを見ながら、言う。

「ほら、お袋。 早く起こせ」

クロヌが少しふざけた様子で、オルドルの肘をつつきながら言った。

「誰がお袋ですか。 それにしても、起きてもらわないと困りますね」

クロヌに軽くツッコんでから、安眠してスヤスヤと寝息をたてているミコガミから布団を引き剥がそうとする。
他人を起こすための常套手段じゃが、故に成功率も高い。

冬場であれば、取られて十秒以内に、布団を奪った奴に飛びかかり戦闘体勢になれる自信がある。

昔、妾がそれをやって、起こしに来てくれていたクロヌの返り討ちに遭ってボコボコにされて以来、素直に起きるようにしているがのぅ。