ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

姫は勇者で魔法使い。 ( No.75 )
日時: 2011/09/17 17:35
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: yjIzJtVK)
参照: この作品は助太刀部の壮絶なネタバレを含みます。

「…………え?」

今まででさえ、次期皇位継承者という立場柄、おつかいなどには行ったことがないというのに、こんな時に……?
一般人でさえ、こんな戦時中に子供をお使いに行かせるような真似はしないだろう。

「シャルロット様、それは少々危険では……?」

同じように感じたらしいオルドルが、母上に告げる。

「んー、でも、要人が行かないと困るものもあるのよ〜。 それにクロヌたちがいるから大丈夫でしょう〜?」

むぅ……。
そうは言われても、漠然とした目的の為に、自分の身を戦火のもとに晒すような自己犠牲の精神は持ち合わせていない。

「それでね〜、探してもらいたいものは5つあるの」

母上がおつかいとやらに、妾達が出かける前提で話し始める。
先に話しておいて、段々と断りづらくしていく戦法か……?

「1つ目は『腐槌』。 2つ目は『月兎』。 3つ目は『百鬼夜行の主』。 4つ目は『能力者』。 5つ目は『【不知火】の血族、及び眷族』」

どうしよう、例にもよって何一つとして分からない。

4つ目の能力者に関してはオルドルに叩き込まれた知識が多少あるものの、未だに詳細は理解できていない。

確か、時々能力者とかいう最初から魔術等を扱える者がいる、とかそんな内容だった気がする。
本来、初歩的な魔術以外……例えば、オルドルの【クイックシルバー】やクロヌの【大山鳴動】は取得及び完成させるまでに、多かれ少なかれ時間を要する。

しかし、能力者はそんなことをせずとも、上級魔術を扱えてしまうらしい。
勿論、能力毎に使える魔術の属性が異なるため、大概は他の魔術も取得するようじゃがな。

「多分、理解できてないだろうから詳細資料をあげるわ〜。 自室でしっかりと目を通しておいて頂戴、と言いたいところなんだけど〜」

母上が変なタイミングで言葉を切る。

「そんなことをしたらサフィールが理解できないだろうから、3人ともよろしくね〜」

やはり母上も妾をバカにしておるようじゃな……。
まぁ、でも、事実として詳細資料の内容は十中八九理解できないだろうし、助けは必要じゃな。

「い……分かりました」

ミコガミが母上にそう伝える。
最初の「い」は「嫌だ」ではあるまいな……?

* * * * * *

「姫様、おやつはどうなさいますか?」

自室に戻ると時計が3時近くを指していたため、オルドルがおやつの用意をしようと動き出す。
甘いものを食べると脳の回転率がよくなるというし、何か甘いものを注文しよう。

「甘いもの」
「もう少し具体的にお願いします。 特に希望がないなら、紅茶と和菓子をお出ししますが」

明らかに違う文化同士を組み合わせるとはなんたる邪道。
その2つは両方とも好きじゃが、一緒に食べたいとは思えない。

「ブリオッシュと紅茶」
「かしこまりました」

オルドルがうやうやしく頭を下げる。
うむ、これを食べれば、甘い物効果で作業効率があがるはずじゃ!