ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 姫は勇者で魔法使い。 ( No.76 )
- 日時: 2011/09/19 23:08
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: yjIzJtVK)
- 参照: この作品は助太刀部の壮絶なネタバレを含みます。
「それにしても、シャルロット様も急だぜ。 『急いでいるから、早めに支度して、明日にでも出発してね〜』だなんてよ」
ミコガミがソファに横たわりながら、疲れたような表情で言う。
ちなみに、先のように妾の布団を使っていたところ、オルドルに「姫様のものを使ってはいけませんよ」と言って取り上げられてしまったらしく、ソファの横にあった少し大きめのブランケットをかけている。
今さっき、オルドルの両性愛という特殊性癖が発覚したとき、情けないことにもわずかながら彼を拒絶してしまったが、その性癖は上手く転べば別段困る物でもないし、気にしなくても大丈夫なようじゃのぅ。
「それだけ急いでいるっていうことだろう。 俺は既に身支度を終えたが?」
クロヌが「用意は終わっていて当たり前」という意味合いを含んだ視線を妾とミコガミに送ってくる。
「私ももう終わりましたよ」
淹れたばかりで、湯気が立ち上っている紅茶と食欲をそそる甘い香りを周囲にばらまいているブリオッシュが乗った銀色のお盆をこちらに運んできたオルドルも笑みを浮かべて、そう言った。
すると、ミコガミが焦りの表情を浮かべて、にわかにソファから起き上がる。
ブランケットを畳まずにソファの上に投げ置き、そのまま自室へ向かって駆け出そうとする。
「安心するが良い。 妾もまだ準備は出来ておらぬ」
ミコガミを安心させるために、柔らかい笑みを浮かべながらそう言う。
妾の場合は、用意云々の前に衣服がドレスなどの豪奢なものばかりだったため、かさばって入らなかったのじゃがのぅ……。
「そこまで急がなくても問題ないでしょう。 それに、資料は全員居る時に目を通しておきたいですし」
そう言って、オルドルがさっき母上から受け取った詳細資料を手に取る。
「そうだな。 荷物は各自で用意できるが、こっちはそれができないからな」
クロヌがオルドルの言葉に、賛同を示す。
勿論、妾も賛成故、約10ページ程度の詳細資料の束を手に取る。
その資料はパッと見ただけでも、かなり字が詰まっているのが分かる。
ページ数があまり多くない代わりに、1ページ1ページに大量の字が書かれているからなのだろう。
「あちゃー、これはとても姫には読めないぜ。 シャルロット様の心配は杞憂に終われなかったみたいだぜ」
ミコガミがわざとらしい演技がかった表情で、小さい溜め息を吐き、肩をすくめる。
そんな言葉にクロヌが全くだ、と言ってミコガミの横に腰掛ける。
「大雑把に言うと、シャルロット様が『探してきて欲しい』と頼んだものは一騎当千という言葉が似合うような方のようですね」
オルドルが詳細資料をペラペラと捲りながら、概要をまとめる。
「この……【不知火】っていうのか? こいつらは8分の1の血統まで許されるってことは、2分の1の奴は相当強いのだろうな……」
クロヌも目に止まったものについての見解を述べる。
もしかして、難しくてパニックに陥っておるのは妾だけなのか…………?