ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

姫は勇者で魔法使い。 ( No.83 )
日時: 2011/09/26 19:56
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: U3CBWc3a)

「で、どいつから探すんだ?」

ミコガミが資料を読み返しながら、問いかける。

「できれば、このショタを早めに捕まえて、私好みに育てたいのですが……」
「お前はもう黙っていろ」

オルドルの願いをクロヌが軽く一蹴する。
両性愛云々よりも、調教や誘拐のほうが危険じゃな……。

「何にしろ、海外渡航をしなくては行けないみたいじゃな」

母上に渡された資料に書いてあったのだが、どうやら、彼らは全員日本という極東の国にいるらしい。

なんでも、月兎が持っている組織の本部が日本にある関係で、日本に大量の異形や異能が集まってしまったようだ。

「それはテレポートを使えば問題ないでしょう。 とりあえず、順番通りに探してみますか?」
「うむ、そうじゃな」

* * * * * * * * *

「姫がドレス以外を着ているところは、久々に見たぜ」

準備を終え、集合場所に指定された玄関近くのロビーに行くと、ミコガミが既に着いていた。
意外なことにオルドルとクロヌは見当たらない。

「ドレスが詰められなかったでな。 このワンピースを着ておるのじゃ」

ドレスを詰め込もうと、再チャレンジしたもののやはり入る気配が無かったため、諦めてワンピースなどの軽い衣服を詰めたのだ。

ちなみに、妾が今着ているのは、特に飾りがついているわけでもない普通の水色のワンピースだ。
朝は冷えるだろう、と思って、薄い白のカーディガンを羽織ってきたのは正解じゃったな。

「ん? オルドルはまだ来てないのか?」

続いて、クロヌが愛用している大太刀を背負って階段から降りてくる。

ちなみに、妾達の荷物はというと、魔術を使って異次元へと収納してあるため、持ち運ぶ必要はない。
しかし、そのスペースの容量には限界があるため、許容量はその辺りで売っている少し大きめのキャリーバックと大差ない。

「オルドルが最後とは意外じゃな。 妾はてっきりミコガミを叩き起こさねばならないかと思っておったからのぅ」
「あぁ。 俺もそう思っていた」

妾の言葉にクロヌが頷く。
今日起きられたのも、昨日の昼間寝てしまっていたからだろう。

「私がいない間に全員揃ったようですね」

妾達が暇つぶしの談笑をしていると、階段の辺りから待ち人の声が響く。

「オルドル、遅刻だぜっ……って、痛っ!!」

ニヤニヤと笑いながら、そう言い放ったミコガミの脳天に直撃するようにオルドルが左の手でチョップをきめたため、ミコガミが頭を抱えてその場にしゃがみ込む。

「私はシャルロット様からの餞別を受け取りに行っただけです」

……むぅ。
やはり、オルドルは遅刻などをしたりはせぬようじゃな……。

「餞別?」

遅刻の理由ではなく、他の部分に興味を示したクロヌがオルドルに尋ねる。

「お金ですよ。 食費諸々に使え、と仰っていました」

オルドルが母上から預かったというお金を異空間に仕舞う。
この面子の中で言えば、他の誰よりも彼が財政管理に向いているだろうし、管理には適任だろう。

「では、出かけましょうか」

そう言って、オルドルが扉を開ける。
その扉が開くにつれて、妾たちの出発を祝うかのような眩しく輝く朝焼けが視界に広がっていく。