ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

姫は勇者で魔法使い。 ( No.95 )
日時: 2011/10/22 19:22
名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: Hfcg5Sle)
参照: 助太刀部のネタバレどころの騒ぎではない件についてw

【不知火の血族、及び眷族】

極東に位置する国、日本。
その国のとある森の中に建っている西洋の城のような立派な建物の一室でのこと。

「翔、もう朝だよ」

緑色の瞳に、金糸のように綺麗な髪の青年が、浴衣を着て眠っている青年を揺さぶる。

しかし、浴衣を着た青年は起き上がる素振りさえも見せず、スヤスヤと眠り続ける。
金髪の青年は浴衣を着た青年を起こすことを諦めて、自分の身支度を始める。

「えっと……眼鏡はどこに置いたんだっけ?」

そう言いながら、自分のベッドの横のランプが乗った棚のあたりを手探りで探してみると、すぐに眼鏡のつる部分と思わしきプラスチックが指にぶつかる。
あっさり見つかったそれをかけ、昨日のうちに用意しておいた服に着替える。
そして、もう一度、浴衣を着た青年を起こそうと、後ろを振り向く。

「…………」

その瞬間、目に入った光景に金髪の青年が絶句する。

なぜなら、浴衣を着た青年のベッドの中から黒髪灼眼のこの世のものとは思えないほどの美貌を持った青年が現れたからだ。
しかも、困ったことに浴衣を着た青年の頬が摩擦熱で焼ききれるのではないかと思うくらいの強さで頬ずりをする。

満面の笑みを浮かべている黒髪灼眼の青年と対照的に、浴衣を着た青年の方は寝苦しそうに呻き、もがく。

「……忍さん、やめてあげてください」

金髪の青年が、忍と呼ばれた青年をどかそうとベッドへと歩み寄る。
しかし、忍の「相斗も兄さんと寝たいの? こっちにおいで!!」という言葉を聞いた瞬間、その場で硬直する。

「忍、翔くん、相斗くん。 ご飯、まだー?」

見事な妨害タイミングに部屋の扉から、白と薄いピンク色のゴスロリ、濃いめのピンク色のロングヘアに映える黒いリボンカチューシャをつけた幼女が現れた。
その子は、どこからどうみても幼女なのだが、何故だか胸だけは成人女性の平均よりも遥かに発育がいい。

「俺は翔と相斗を食べるから、朝ご飯いらないよ。 父さんとかモアクにでも作ってもらって」

忍がピンク色のロングヘアを持つ幼女に、投げやりな雰囲気で答える。

「そんな……そんなことをしたら、翔くん達が朝ご飯を食べられないよ……?」

ピンク色の髪の幼女が微妙に的を外したことを言う。

「ん……?」

そんな幼女の言葉からワンテンポ遅れて、忍に抱きつかれている浴衣を着た青年が目を開ける。
そして、寝起きで回転の悪い頭を働かせ、瞬間的に自分の置かれている状況を把握し、忍をベッドから蹴落とそうと渾身の一撃を喰らわせる。

だが、忍はそれを物ともせず「うへへへ、翔ってばツンデレなんだからー」と言い、翔と呼ばれた青年の頭を撫で回す。

金髪の青年、改め相斗はそんな混沌とした光景を見て、一言こう言った。

「うん、いつも通りだね」