ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 姫は勇者で魔法使い。 ( No.99 )
- 日時: 2011/10/27 20:24
- 名前: 野宮詩織 ◆oH8gdY1dAY (ID: Hfcg5Sle)
「母様は結界内に逃げてください。 俺たちは母様が逃げ切ったのを見計らってから、行きます」
背の高い青年がそう言うと、ピンク色の髪の少女が軽く頷いてからパタパタと森の奥へ向かって走り出す。
迷子では無いようじゃが、森の奥に住んでいるというわけではないだろうし……。
「お前ら、迷い人か?」
背の高い青年が、腰に吊った刃の柄に手をかけながら問うてきた。
妾達が先に得物を構えているわけだし、当たり前の反応だろう。
「迷い人と言いますか……土地勘が全く無い場所にテレポートしたが為に、変な場所にたどり着いてしまっただけです」
オルドルが自らの得物を懐にしまいながら、説明する。
目の前に森が広がっていた時には何事かと思ったが、そんな理由があったのか……。
「…………そうか。 それでは、お前らはどこへ行きたいんだ?」
背の高い青年が柄から手をずらすことなく、再び問いかけてきた。
背の低い少年は飽きたのか疲れたのか、足元に広がる芝生に直に座り、腰に下げているポーチから取り出した棒つきキャンディをなめ始めた。
妾は昔からああいうキャンディは虫歯になるという理由で食べさせてもらえなかったからのぅ。
正直、少し羨ましい。
「目的地というか、オレらは人捜しをしてるんだぜ」
ミコガミが何故か胸を張りながら、そう言った。
恥じるような部分は無いが、誇るところも無いと思う。
「人捜し? それは力になれそうにないな。 さっさと去ね」
背の高い方が、冷たく言い放ち、背を向ける。
何を思ったのか、ミコガミとオルドルが彼の背中に向かって、切っ先が鋭く尖ったクナイやナイフを投擲する。
しかし、何が起こったのか、青年に当たることなくそれらの武器は地に落ちる。
青年は指一本動かしていない……ということは魔術を使ったのか?
「去ね、と言ったはずだ。 すぐに立ち去れば、今の狼藉も不問としてやろう」
背の高い青年が抜刀し、切っ先をこちらに向けて忠告する。
彼の日本刀は刀身が黒く塗られており、魔術を纏っているのか刀身を取り囲むようにして青白い電流が走っている。
「姫様、行きましょう。 私たち3人が束になっても、彼1人に勝つことさえ、ままならなそうです」
オルドルが前へ進むことを促すかのように、妾の背中を押す。
先の攻撃は、相手のステータスを計るためのものだったらしい。
それにしても、あの攻撃を口実に相手が斬りつけてきたらどうするつもりだったのだろうか。
「うむ。 戦う理由も無いし、退散するのが賢明じゃな」
妾の言葉を合図に、クロヌが妾をおぶり、走り出す。
クロヌの背中にしがみついたまま、チラッと後ろを振り返り、すぐ後ろにオルドルとミコガミがついてきているのを確認する。
もちろん、あの2人がついてきている様子はない。