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Re: 風プロ パラノイア 〜Ep1〜 3−5更新 レス数百突破! ( No.130 )
日時: 2011/10/14 22:19
名前: 風猫(元;風  ◆jU80AwU6/. (ID: rR8PsEnv)
参照:

Episode1

Stage3「楽しもうぜ? 基本なんて良いじゃない適当で? 基本疎かにすると死にますヨ?」Part5副題『血反吐の夜』
(一人称視点:HN・焔錠 本名・海淵 焔視点)(微エロ注意)


     夢幻の空は、血に染まる。 真の空は暗く暗く……壊された心の闇だけが紅く紅く…………紅く——————
  
  夜、アストラルに来て始めての安息の時間。
  柔らかいベッド、高級感の有るシックな部屋。
  それは、戦いに疲れた戦士達を癒すに十分な物なのだろう。
  だが、私の心は、悲鳴を上げ続けていた。
  あの洞窟で起こった出来事が忘れられない。 初めての死……冬音殿に襲われた恐怖。
  何もかもが私の心の根幹に染み込んでしまった様な感覚。

  私は、ゼェゼェと荒い息をしながら飛び起き目を瞑る。
  目を瞑ると自然とあの時の記憶が蘇っていく。 洞窟に入ってから彼女が殺されるまでの記憶が駆け巡る。

  最初に見えた風景は、藻による緑の絨毯が降り頻る沼地の中にぽっかりと開いた大きな洞窟。
  それは、怪物の口の様な入り口。 鍾乳石が不気味に垂れ下がり丁度、怪物の牙を思い浮ばせる。
  足が竦むのを彼女は、胸を勢い良く叩いてフォローしてくれた。

「本来は、陰陽師ってのは後方支援型なんだけどね……今の君よりは、あたしの方が接近戦も遥かに強いよ?
だから、大船に乗った積りで君は、お姉さんの戦いを拝見してなさーぃ!」

  洞窟に入った瞬間に、倒すべき対象であるモンスターの根城だと言う事に無意識に緊張感が走ったのを覚えている。
  その緊張感を和らげるために彼女は、言葉を掛けたのかとあの時は思っていた。
  だが、実は違ったのだろう。 君は、逃げられないと釘を刺していたように感じる……今に成っての話だが。

「十九かぁ……若いなぁ。 生延びないとね? 二年間頑張らないとね……」

  私が緊張しているのを確認すると彼女は言葉を掛けてきた。 緊張感に私が、押し潰されないようにと気を使ってくれたのか。
  それとも、自分の欲のために唯単に私の情報が出来る限り欲しかったのか。
  今の私の心情からすれば後者を取りたいが、あの時の彼女は母性に溢れた表情で。
  私の未来を心底、気遣うようだった。
  何故。 犯して殺そうとしたくせに……分らない。 人間とは、面倒だ。

「職業には職業ごとの間合いが有るわ。 其れを知ればレベル以上の働きをすることも可能よ?」

  敵との戦闘になる事に彼女は、私に、戦闘のノウハウをレクチャーしてくれた。
  あの時は、既に警戒などせずフランクで優しい彼女に心酔さえしていたように思う。
  そして、洞窟の奥深くに悠々と私達は、何の苦も無く近付いていく。
  次第に、巨大な咆哮が響き渡りだす。 恐らくは、この洞窟の主、今回の討伐対象だろうとその時の私は、体を強張らせた。

「強大な体力を誇るギルドが狩猟対象とする手強いモンスターには、幾つかのほかのモンスターには無い特徴が有るわ。
其れを肌で感じ書物で知り把握する事が、戦士にとっての急務ね。 今回の相手は、背後に回られると極端に弱いタイプよ。
あたしは、正面からでも倒せるから君は、相手に狙われないように背後に回るようにしてね?」

  しかし、私は、何もすることは無かった。
  彼女の言葉を噛締めそして、唯、対象の後ろへと逃げ込んだ。
  是が、最初の壁か。 とても今の自分が相手に出来そうにない巨体と存在感に逃げるだけでもあの時は押し潰されそうだった。
  そんな巨大な巻角が特徴的な紫の皮膚の四速歩行の巨獣。 ゴルガスを相手に、冬音殿はまるでダンスをするかのよう。
  その細くしなやかな体躯は、本来、女である筈の私が見惚れる程。
  心酔していた。
  強さに……美しさに。
  
「止めよ……雷神招来!」

  手刀を造り、強力な雷の陰陽術を彼女は、ゴルガスに食らわせた。 一撃で、巨獣は、黒焦げになり崩れ落ちた。
  焦げた臭いが鼻孔に入り私は、むせって思わず鼻水を流してしまった……

  やったでござるな! そう、祝福しようとした瞬間だった。 
  彼女が、満面の笑みを浮かべながら私の腹部に装備品の杖を突きつけたのは。
  私は、一瞬理解できなかったが、世界が反転し倒れこんだ後に来た鈍痛に何が起きたのか把握した。
  目の前の女、冬音殿に攻撃された事を。 胃酸が競り上がり喉を酸っぱい味が支配する。  
  そして、喉が傷付いたのか僅かに流れ出た血の味が口内を支配する。 
  一体、何を?と、口にする間もなく私は、彼女に馬乗りにされて身動きが取れなくなった。

「ふふふっ、男で女とか……最高に、魅力的じゃない? そして、初心者でガードが緩いってのも良いわよね!
じゃぁ、遠慮無く……バリバリッと! 良いよね? 君は、あたしのお陰で任務完了させられたんだから!」

  私の服は、容赦なく破られていく。 少しずつ、肌を見せるようにねちっこい破り方。 彼女の趣向だろうか。
  適度に筋肉の付いた二の腕を愛で、腹筋を目で……私の引き攣る表情と緊迫感で汗ばむ体を彼女は、存分に堪能する。
  時には、二の腕を下から上に嘗め回し腹筋を数分にも渡り撫でまわした。
  私の体は、良い知れぬ悦楽……快楽に支配され弛緩し痙攣していた。

「ふふっ、可愛い。 感じちゃってるの? じゃぁ、もっともっとお姉さんが気持ちよくしてあげるわ」

  嫌なのに抗えない。 嫌なのに体は喜んでいる。 何処のエロ漫画だよ!? ふざけるな……あんたには、失望した!
  彼女の言葉など聞かずに立ち上がろうとするが、私の力では、彼女は微動だにしなかった。
  絶望感が襲う。 その絶望感が表情に一瞬出る。 それを察知した彼女は、更に火をつけ行動をエスカレートさせていく。
  ついに、私は、全裸にされた。 あぁ、今迄の人生の中で一度も見たことの無かった男性性器……
  彼女に欲情しているのか膨張してそそり立っている……眩暈がするのが理解できた。

「わぁっ! 案外、おっきいじゃん! じゃぁ、お姉さんも脱いじゃおっと」

  私の陰部を一頻り撫で回し彼女は、羽織っている服を脱ぎ始めた。 臆面も無く。 目の前の私が、同性だと理解しているように。
  否、裸を見られても恥ずかしくない……愛する者に見て欲しいとでも言うように……
  人生最大の恥辱が、私の体の全てを支配していた。 
  上半身が顕になる。 乳房が揺れる。 私は、目を伏せる。 同性とて……否、同性だからこそ恥じらいが有る……
  嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ。 こんなのは嫌だ! 望んでいない!
  誰か、助けて……

「助けなんて来ないよ? 此処は、マゾフィストとサディストの愛の巣。 迷い犬の君は最初からメインディッシュ」

  私の心が鳴らす警鐘を感知した彼女は、希望など無い事を突きつけてくる。
  涙が浮ぶ。 でも、あの杖の一撃は予想以上に自分の体を侵食していて…… 
  手も足も動かない。
  恐怖で声も出ない。 声が出た所で助ける者など誰も居ない此処では、彼女を喜ばせるだけなのだろう。
  あの時の私の脳内には、自尊心の破壊による絶望と是から殺されるだろう絶望と恐怖と……
  憧れの崩壊と言う善意の滑落が綯交ぜになっていた。

「あったしってさぁ、着やせするタイプなんだよねぇ? 胸、結構有るだろう少年少女……」

  顕になった自分の胸を誇張させながら冬音殿は、履いてスカートを脱ぎ捨てた。
  そして、パンツに手をやる。
  私は、是から何をされるのか明白に理解し目を瞑った。 是は、何の罰だ。
  本来、女性である私が女性に犯されようとしているなど。

「ストーップ! はいはい、パーティも其処までだ。 我が妹よ……相変わらず良いスタイルしてやがるな!」

  あぁ、もう駄目だ……そう、思って全てを諦めた時だった。
  男の声が聞こえてきたのは。
  聞き覚えの有る声。 そうだ、ギルドで聞いたあの低い声。
  どうやって来たのかその男が今、此処にいる。
  助かる、希望が見えた……私は、その後に行われる惨劇の事など当時は、予想もしていなかった。
  冬音殿もストレンジア殿も……全く理解できていなかったから。

「あら、愛しのお兄様! ゴメーン! 冬音反省! あたしったらお兄様だけの女なのに……」

  何も反省している様子の無い冬音殿の言葉を無視して疾風が彼女の横を駆け抜けた。
  私の目になど線すら映らぬほどの神速で……何が起きたのか分らなかった。
  理解した時には、冬音殿の細い左腕から大量の血が噴出し数メートル離れた場所に切断されたと思われる手が落ちていた。
  一瞬にして、彼女の周りは血溜り化し冬音殿は、ヒューヒューと荒い呼吸を繰り返していた。

「俺様さ……お前みたいなキショい女、心底興味ねぇんだわ……あえて言うなら今、男の姿して倒れてるそいつのが好み?
唯、お前が罪を犯して俺様に殺されてくれる事だけは感謝してるんだ。 だからさ……俺様好みに血塗れになって死ね」

  何の勘定も伴わない語調。 会話の内容からするに家族関係。 そして、近親輪姦紛いの事をしてきたのか。
  呆然とする。 世界の縮図が見えた気がした。 
  唯、彼は、身の丈以上有る長大な太刀を彼女を殺すために振るいたくて仕方ない。 そんな様子なのだ。
  私を助けるのはあくまでついで。 そして、冬音殿は、処刑する気しかない。

『何だ是? 有りえない。 何の罰だ?』

  私に非が有るのではないか? 日ごろの私の行いが悪いから此処まで苦しいのではないか。
  冬音殿に絶望し彼女を糾弾して居た心は、何時しか彼女を責めることすら愚かと悟り、自分ばかりを叱責していた。
  もう、何も分らない。

「痛い……いたい……よぉッ! お兄様、是……凄い血だよ? 冬音、お兄様の為に見も心も全て捧げる覚悟なの!
だから……だから、許してお願い! 愛しているから……許してよ!」

  上半身丸裸の彼女は、既に片腕は無い腕を大きく広げ精一杯自分の体を誇張しながら許しを請う。
  それは、まるで愛する男に身も心も全て捧げている事を証明させているかのよう。
  R指定の映画のワンシーンの様……私は、嫌だった。 冬音殿が、殺される事が確実に分ったから。
  人が死ぬのが嫌な私は、必死で立ち上がり止めようとする。 だが、体に力は入らない。
  死を見たくない……彼女の様な見知った言葉を交わした人間なら尚更、恐怖を感じる。

「お前の愛には、節度ってモンが足りねぇんだよ……ルキア」

  ズッ……音を立てて彼女の胸に、兄であるストレンジア殿の刃は減り込んだ。丁度、乳房は傷つけないように胸の中央を。
  刃は通る。 彼女の目から生気が失せて行く。
  「やめてくれ!」 私が、怒声を上げたのは、彼女に致命傷が、命中した数秒近く後の事だった。

「あたしって……お兄様。 あたしって……可笑しかったのかな? 人に、迷惑……掛けてたのかな?」  
 
  彼女は、満足げな瞳でストレンジア殿を見詰た。
  それは、恋人に態と迷惑を掛けて困らせたいと言うお茶目な彼女の計らいの後の表情に見えて美しい。 
  何も殺すことは無いじゃないか? 本当の妹なんだろう! 何で……言い知れぬ罪悪感と彼女への憎悪……
  矛盾した感情の奔流……
  そんな中でも二人のやり取りは続く。

「あぁ、掛けたな。 だが、俺達は、須らく皆、人に迷惑を掛けているさ。
ルキア、お前は、俺様にとって最高に美味しい妹だった。 最後に感謝する。
そして、俺は、永遠に化物として他人に迷惑を掛け続ける……恐怖を与え続ける。 断りの中で……」

  ストレンジア殿は、口内から大量の血を流し徐々に生気を失っていく妹君を気にすることも無く。
  太刀を彼女の胸から強引に抜き去った。
  冬音殿は、支えが無くなったと同時に、崩れ落ちる。 軽い彼女の体は、予想通り何の音も立てず木の葉のように倒れ臥す。
  乳房が、地面に密着し扁平系に形を変える。
  ヒューヒューと血が詰ったのか、狭い所を風が通るような音が響く。 目の色が薄れていく。
  健康的な透き通る肌の白が、生気を失っていく。
  死が、形を現す。

「さようならだ……」

  彼は、横たわる冬音殿に止めを刺そうと太刀を構える。
  
「待て! 本当の妹だぞ!?」

  今度は、何とか声を出せた。
  あぁ、どうせ、彼女は直ぐに事切れるから意味が無いのか……嫌だ、何も考えたくない。
  今も、そんな状況だ。

「どうだって良いだろう? あの女は、俺に殺されることが望みなのさ……
だから、こんな楽しい真似をしてくれる……くくっ、あははははははっあひゃっ、ひぃーっはははははは!」

  狂乱の瞳で唯、ストレンジア殿は、殺戮に興じるサイコ趣味を全開にしてけたたましく笑い続けた。 
  止めを刺す前に、実際には彼女は息絶え現実世界での艶やかな姿へと変貌して居たのだが。

  私の経験した一日目のアストラル。
  それは、正に私にとっての地獄の集大成の様な物だった。
  私は、心に深く決めた。 行動は、もっと慎重にすること……もう、他者と絡まないと言うこと。
  失う痛みを知ってしまったから————…………

「怖い……痛い………痛いの怖いの嫌なの……」

  唇が震えるのが分る。        
         

         〜Stage3「楽しもうぜ? 基本なんて良いじゃない適当で? 基本疎かにすると死にますヨ?」〜
  
Epsode1 The end