ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 風プロ パラノイア Ep2 2-1更新 10/23 コメ求む ( No.235 )
- 日時: 2011/11/02 21:52
- 名前: 風猫(元:風 ◆jU80AwU6/. (ID: rR8PsEnv)
Episode2
Stage2「現実も非現実も分らないんだ……だから、赦してくれよ」Part2
(一人称視点:HN・Neuron 本名・馬宮 優希)
全てが鮮明に映るけどやっぱり、人間はぼやけて見えるんだなぁ————
Neuron————
ハウスの中はそれなりに広い。
でも、それにしても人が多すぎて……あぁ、人。 人人人ヒトヒト人ヒト人人人ヒトヒトヒト。
百人は超えてるその数。
正直、酔いそう。 明らかに人口過密で肌が密着するし……
いや、正確にはそこまでじゃないけど……やっぱりさ。 キモイ。
パーソナルスペース内に十人も知らない人間が居て……吐き気する。
キモイ。 キモイ。 キモキモキモキモキモキモッッッッッッ!
あーぁ、早速、後悔だよ。
ログアウトシステムがおじゃんって言うか最初っから無いから出られないみたいだし。
マジ、人生の選択って奴を完全に謝った感じ。
僕の人生自体が常人から見えれば間違えの塊なんだろうけどさ……
この間違いは大きいかなぁ。
何だか、ゲームの中で死ぬことになります系な感じがモワッとするのよね?
そこはかとかじゃなくてマジで強烈な異臭を放っててさ?
まぁ、そんなやばい感じが面白そうなんだけど。
何だけど……
ん? んんんんんんんんんんんんんんんん!?
あれ? 気色悪い肉塊の樹海を抜けてみるとなんだか見覚えのある陰が。
え? なんで人嫌いとか気持ち悪いとか言っておいて積極的に人ごみに入ったかって?
そりゃぁ、面倒なのが嫌いだから色々状況とかどんな間取りかとかを知りたいからさ。
ほら、こんな沢山の人間収容する場所、重要じゃないはずないじゃん?
それに、どんな職業の奴が多いかとか知っといた方が良いだろうしさ……
じゃなくて! あれ? あのインフォメーションとか書いてあるカウンターみたいな場所。
あそこに居るのあの眼帯色白美人姉さんじゃん!?
どうなってるの? あぁ、ゲームマスター的立場だからテレポートとか出来るのね?
そうですか。 最高です。 ごちそうさま!
「今日、ログインした面々はこれで全員ですね。
総勢、二百八十八名の新規の入会のお客様ごきげんよう。
私は、本オンラインゲームのメインオペレーティングシステムにして受付嬢を務めるフリーダです。
多くの方々のご参加、この作品が評価されていることを感じ感無量でございます。
では、このゲームのシステム等についての説明を開始します。 よろしいでしょうか?」
三百人近くもいたのかよ?
それにしても、なっがい台詞だ。
いやぁ、何て言うか社交辞令みたいなゲームだったら一々聞かないで飛ばすような台詞。
でも、肉声が入ると中々飛ばせないよな? 澄んだ声に思わず聞き入る……うん、僕も人間嫌い全開ではないみたいだ。
まぁ、ここから説明口調全開のゲームの内容説明に入るわけだけど……
正直、たるいけどこの話は聞いておいて損は無さそうなのでご清聴しようと私は思います。 ハイ。
ログアウト出来ない状況、そして、このゲームに手を出したプレイヤー達が、一週間経っても誰も帰ってこないこと。
今更ながらに危険な山に手を出したんだって理解した連中が、滑稽にも不安げな表情を浮かべる。
遅い。 遅いよ今更か? 何の覚悟も無しに手を出したのか? って、深みにはまる気は毛頭ない僕は、一笑してみる。
そんなこんなで訪れた沈黙。 彼女の言葉をさえぎる者は誰一人いなかった。
彼女から語られるゲームの概要は、こうだ。
このゲームは、苦痛、臭い、温度など全ての感覚を現実と一切違わぬ感度で体感できる次世代型のゲームである。
んなこた知ってるって……とか、誰も言わない。 ってか、言えない。 そこからが本筋。
ゲームに決まったクリアと言うものは無くただただ、ギルドから出されるクエストをこなして行きプレイヤーレベルを上げていく。
クエストの内容は、モンスターの討伐から危険地帯への物資運搬、要人暗殺などさまざまだ。
クエストごとに一区切りまいに大別して五つのレベルがあり今の僕達は初心者クラス。
頂点が、下級者・中級者・上級者・最上級者と続くらしい。
普通にプレイして最上級者が生まれるのは、二年位掛かるとの概算だそうだ。
んで、ここが最も気になるところでこの可視化されているHPバーみたいなのがゼロになったらどうなるのかって話。
彼女がその話にさしかかったとき、皆が息を飲む。
「なお、HPバーがゼロになりますとその場で人生が終ると思ってください。
アバターが砕け散り元の肉体へと変換されるのが死のサインとなります」
一気に周りがざわめいた。
そりゃ、そうだ。 面白半分で入った連中がほとんどでゲームで死ぬ気なんてサラサラ無いんだろうから。
そして、彼女は更に訥々とつづける。 このゲームの難易度から計算される死亡率。
クエストのレベルが一段上がればそれ以前の最強装備でも雑魚モンスターの一撃でも容易く死ぬ可能性があること。
ダメージが必ずしも一定ではないこと。
すべてを加味して少なくとも戦い方を知らない僕等では、この数では全滅だろうと言う。
「そもそも、ゲームのクリア条件はなんなんだ!? どうやったら俺達は現実に戻れる!?」
始めてプレイヤーが声を上げた。
何か、黒髪長髪の面長の少しイケメン程度のオンラインゲームにしては少しパンチの少ないプレイヤーだ。
選んだ職業は、服装からして聖職者らしい。
そいつの言う事は最もだ。 俺も気になる。
まさか、永久に出口の無い地獄で戦い続けろなんて理不尽なこと言うんじゃないだろうな?
そうなったら、ここの連中の何人かがパニック起してやばいことになりそうだ。
「貴方方にはクリア条件が設けられます。
貴方方のために用意された最終クエストをそれぞれがクリアする事です。
その最終クエストは、最上級者用クエスト最高難易度。 オペレーション零とします。
なお、このクエストは、プレイヤー単体でのエントリーは不可能。
無論、安全のため、一人でも最上級者に達していない場合は参加できません。
そして、最後に、これをクリアする事により脱出するに可能な貴方方に与えられた猶予時間を二年とします」
「もし、それを二年以内にクリアできなかったらどうする!?」
最上級者になるのに普通にプレイして二年。
その最上級者用のクエストの最高難易度。 それを二年でクリアするって滅茶苦茶じゃないか?
レベルの制限は無いってことは最上級者になってからが長いってことだろ?
それの最高難易度ってことは、相当なはずだ。
全員、最上級者になってから相当レベルを上げた方が良いと言うことが容易に読み取れる。
しかも、必然、団体行動をくまないといけないよな? 僕、団体行動とか嫌いだ!
って言うか、集団で連係プレイとかできないとそのオペレーション零とかってのはクリアできないよな?
あれれ? やばい。 傍観者をこのゲームは許さないみたいだ。
じゃぁ、二年経つまでにそれをクリアできなかったら僕はどうなるんだ?
当然の疑問。 それをまた、あの聖職者は問う。
どこまでも真っ直ぐな声で……状況飲み込めてるのかってくらい焦りのない声で……
「二年の間にクリアできなかった者達は、死ぬということはありません。
唯、新たにオペレーション零以上のクエストを用意します。 一年周期で脱獄ミッションのレベルを上げていきます」
『脱獄ミッションって……やっぱり僕らは囚人なのか』
脱獄ミッションとか言っちゃったよこの人。 なんだか急に腹立ってきたよ。
僕は、唯、慌てふためく馬鹿達の姿を見たかっただけなのに。
あぁ、ゲームマスターでもない僕が、神様になれるはずも無いか。
ふっ、ふふふふふっ……仕方ねぇなぁ。 あいにくとゲームは得意だ。 キャパもあるんだぜ?
やれやれだ。 乗ったよ。 で? まずは、チームを組まないとな。
確か、組める人数は最大三人。 僕は中間型だから後衛と前衛が欲しいな。
「では、私からの話は以上です。
最後に、貴方方はこれから自らのオーラの色と同じプレイヤーとチームを組むことになります。
チームの脱退などは許可されていません。 女地色の方々がこれから運命共同体となるのです」
えっ?
澄ました顔で何言ってんの?
それって選択の自由が無いじゃん!? メンバーが偏ったりしたらそれだけで苦労じゃん!?
ランダムなんだろう……ランダムとか最悪!
でも、覆りようが無さそうだ。 とにかく、相手を見つけよう!
まずは……あぁ、あの半端にイケメンな聖職者が僕と同じ青紫色だ!
あとはあとは…………どこ? どこだ!?
「青紫のオーラ出してる奴どこー!?」
「あっ、はい、それなら私ですけど……ちょっと、そこの殿方、どいて下さい!」
僕は、一刻でも速くこのデスゲームに慣れたいがために急ぐ。 それが荒げた声に出る。
僕の心が警鐘を鳴らしている。 あの女の冷徹なまでに抑揚の無い声。
それが、このゲームは確実に本当に人が死ぬと告げている。
その声に答えたのは、女の声。
少しお嬢様っぽい口調の良く通る落ち着きのあるボイス。
僕は、声のした方向に顔を向ける。
そこには、青のウェーブ掛かった長髪の金と緑のオッドアイの黒のゴスロリ風の日傘を差した色白の美女。
この無頓着が少しだけ見惚れるくらいの美人。
正直、だいこん大魔法とやらは、護らなくても良いけど彼女は、護りたい。
いやいや、一人でも欠けたらやばいんだけど……って、れれれれ? 待て。
二年の間に仲間が欠けたらどうするんだ? 補充されるのか?
っていうか、二百八十八って、運良く割り切れる数字だけど割り切れなかったら二人の場合も有るのか?
可愛そうに。
「おい、レディーには、優しくしろよ。 そこの俺以上に無特徴な夜兎とか言う奴!」
「…………ゴメン。 悪かったね? えっと、菫さん?」
おのれ、だいこん大魔法! 僕が、声を掛けようと……うん、恋愛イベントとかなったら面倒だからしないけど?
って言うか、本当に夜兎って奴……何の特徴もねぇなぁ……服装は、移動性を考慮した軽装備。
殺人鬼のオーソドックスな奴だ。
まぁ、深く関わる事も無さそうだからすぐ忘れるだろうな。
彼は、すぐに自分のチームを探しその場から姿を消した。 どうやら、町の施設を確認しに行くらしい。
「ところで貴女の職業は? 前衛型がいないから前衛型だと好ましいんだけど?」
「そうですわね?
命がけの闘いになるのでしょうのでメンバー構成は多岐に富んでいたほうが、宜しいですわよね?
各クエストの特徴にあわせて対策も取れますし。
えぇ、ご心配なく。 わたくし、これでも暗殺者ですの。
この派手なスカートの下にたっくさんの暗器を忍ばせるタイプのね?」
やれやれ。
取り越し苦労だ。
だいこん大魔法の聖職者は中距離サポート型で彼女の暗殺者は、近距離攻撃特化。
ランダムとか何とか言って周りを見れば計算された組み合わせが良く分る。
ある程度の良心はあるらしい。
まぁ、こんなことやるにしてはって程度だけどね?
この姉さんは、それなりにゲームの熟達者みたいだし……うん、第一関門は突破ってところかな?
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