ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: パラノイア Ep2 2-5 12月16日 更新! ( No.269 )
- 日時: 2011/12/26 23:03
- 名前: 風猫(元:風 ◆Z1iQc90X/A (ID: G9VjDVfn)
- 参照: アンケでもしようかな? 用紙つくるの面倒orz
Episode2
Stage2「現実も非現実も分らないんだ……だから、赦してくれよ」Part6副題『狂乱双頭 序幕』
(一人称視点:HN・菫ーsumireー 本名・橘 菫視点)
あったかぁい血のシャワー。
わたくしの心の甘さと言う穢れが堕とされていく。
最高。最高! マジ本当、無限の快感が体中を駆け巡りますの!
良い娘は居ないか? 食い物にしてやるよ?
良い男はいないかしら。狂乱の地獄で刀を交えながらダンスをしましょう?
断ったら? あっはぁ、詰らない奴ねぇ。ここは、狂人集うパラノイア。
現実で爆発させられない全ての奔流を垂れ流せ! 聖女はビッチに! 紳士は、真摯に殺人鬼!
理も希望もうわべも何も無い。開放感。そう、ゾクゾクしますの!
己が欲望と心の赴くままに動け! 前にある馬鹿は邪魔と断じて切り伏せろ!
利用できると思えば利用しつくせ! 偽りの愛を語れ! 踊り憎しみ喚き歓喜に打ち震え黒く淀んだ雨に打たれて拳を握れ!
それこそが……それこそが!
「パラノイア」
うっとりしてしまいますわ。なんて甘美な言葉でしょう。足枷は何も無い。暴れ回る資格。
命が軽いと心も軽いですわね。へぇ、貴方の本当の姿ってこんななのですわねだいこん大魔法。冴えない姿ですこと。
爆発し粒子となり消え去るだいこん大魔法。すなわちこの世に存在する事を拒絶された彼。
うふっ。快感ですわ。これ、わたくしがやったんですのよ? もう、くらくらきちゃう。
「ビッチ野郎。死んでおけ」
「おっと、貴方はそんな殿方でしたわね。お言葉ですけどわたくし初心者ではありませんの?
リノゥエイ、貴方と同じ不正行為に手を出してここを追放された憐れで愚かな阿呆なビッチですの」
感慨に耽り嘲笑し続けるわたくし。そんなわたくしに嬉々とした表情で男は切掛ってきましたわ。
貴方は、後方から狙撃するのが大好きなちまちました奴だったと認識して居たのですけどね。
リノウェイ? 勿論、認識してましたのよ。レベルの割に良い働きしてる奴が居るって好評でしたの貴方!
でも、如何に昔のレベル及び道具のデータをアップデートしているとは言えわたくしは元来の近距離型!
貴方に不意打ちを受けた程度で怯えるほど悲しい女では有りませんの!
まぁ、ビッチって言うのは最高の褒め言葉として受け取っておいて上げますわ!
ほら、駄犬! わたくしのハイヒールキックを喰らいなさいな!? そして、駄犬らしくキャインと吼えて見せなさい!
「ぐがっ!?」
「へぃ! パリィパリィパリィ! 良い泣き声で啼いたら直ぐに立ち上がって腰振って変態淑女を喜ばせろ駄犬紳士!」
わたくしの蹴りが腹部に命中して殿方は、大きい体を句の字に曲げて悶絶ダンスでわたくしを楽しませてくれましたわ。
でも、数秒後に地面に倒れこんで虚ろな目でヒューヒューと息をし始めましたわ。
幾ら何でも演技が過ぎますわね。体力値はまだまだ、ありやがるでしょう?
おら! 速く起き上がって次の行動をしてわたくしを愉しませなさい!
速くしないとその蹴り易い顔面を蹴ってしまいますわよ!? って、もう、足が出てしまったじゃないですの?
あーぁ、わたくしの足癖の悪さ最高。自分で濡れるぜ! ん? ほぉ、素手で受け止めやがりましたのね?
へぇ、凄いじゃないの! 弱っちぃ雑魚殺しキックでしたので止めることができても可笑しくないのですがね。
わたくしは、上段者だったのに対し彼は、仕事の傍ら夜しかプレイできませんでしたからかなり力量差あるはずなのに!
良い! 益々、気に入りましたわ! まだまだ、行きますわよ!
次は、そのわたくしの左足を掴んでいる手を蹴ってやりますの! おらぁ!
「っ……があぁぁぁぁぁっ!?」
「まだまだ、尻尾を振るのは速くてよ駄犬!? 楽しく愉快に悲鳴祭りですわ!」
命中。メイ中! メイチュウ命チュウ命中めイちゅウ命中めイちゅウ命チュウ命中めイちゅウ命中!
ほらほらほらほらほらほら! お前の体力バーがガンガン削られていきますわよ! 足掻きなさいな!
いかにテッサイアの野郎に特別扱いされて特許持ってるからってデッドはするのでしょう!?
立ちなさい! 立って銃でも剣でも使ってみなさいな! 抵抗しない奴が相手じゃお姉さん詰らないのですわ!
あーぁ、弱い物虐めは主義に反しますの! 何て言いながら一方通行な攻撃快感! 病み付き!
「あっ? わたくしの足が……!?」
「はぁ、菫さんよぉ。どれだけ強ぇかと思えばチマチマした攻撃ばかりしてくれて……
ちょっと、俺の不感症なあそこがびんびんしてきたぜ? 攻守交替だ! 上手く逃げ回れよ?」
いきなりの痛覚。脳内にスパークする凄烈な痛み。なっ? 足を切られた!? 完全に切断されている!?
ヤバイ、倒れる! 足が完全再生するまでに三秒! 強烈な攻撃を急所に当てられたら……
数回で消滅してしまう! 遊びすぎましたわ! 銃の達人なら反射神経だって良いはず!
観察眼だって……わたくしの蹴りの癖を看破するには、充分すぎる量のキックをわたくしは奴にお見舞いしてましたわ!
迂闊! でも、こんなピンチだからこそ楽しいのですわ。ケセラセラと行きましょうよ!
そう! わたくしが、こんな所で死ぬはずが無いのですわ! 刃! 顔面にダガーを突きたてる気ですの!?
回避! 体を転がして回避! 目の前の光景が緩やかになる。集中力がそうしているのでしょうか? それとも走馬灯!?
悪い方に考えてはいけませんわ! 前者! 絶対、前者……わたくしは、こんな所で死ぬ気は……ないっ!
うっ……ウアァァぁあアァァアアあぁアアァァァァァァアアァァァァぁアアあぁぁぁぁッッッッ!
全力で体を転がす。直ぐ近くをダガーが通過する! そして、地面に命中しダガーを中心に大地を小さく陥没させた。
相当な腕力ですの! あれを直接、頭部に喰らっていたら恐らくは、死なぬまでも五割近くの体力を奪われていたでしょうね?
でも、足は治りましたわ……よ! 攻撃に失敗して体勢が崩れた状態ならまだ、入るでしょう!?
「楽しい。楽しくなってきましたわよ!」
「ごべあっ! くそ、足癖の悪ィ女だぜ……」
命中。吹き飛んだ先に有った先鋭的な三角柱の岩石に命中しリノウェイは苦悶の表情を浮かべて喚いておりますわ!
ここからは、殺し合いですの! 私も武器を使うとしますわ。こんな初心者の使うような武器じゃなくて……
「ふっ、久し振りですわね。ヴァーキラピカ。やっぱり貴方がしっくり着ますわ」
「良いねぇ……素敵に不適にきまっちまってるぜ菫様よぉ! そんな、極まっちまってる姿に痺れる憧れる!」
ヴァーキラピカ。中級者の購入する事のできるナイフの枠内を越えたナイフとしては破格の攻撃力を秘めた武器ですわ。
長らくお世話になってますの。この血の様な赤に炎の装飾が施された武器。本当にわたくし好みですの。
だって、パラノイアを象徴しているようじゃなくて? 血と炎。血は文字通りモンスターのそしてわたくし達の大量の血。
そして、この火花散る炎の中に居るかのような白熱した感覚! そう、わたくしのパラノイアに対しての理想と思念。
ヴァーキラピカは、全てを備えていますの! あぁ、あの大会が無くてはわたくしは貴方に会えなかった!
そして、わたくしがあの大会で優勝できたのは貴方の魔力に絆されていたから。殺戮の象徴に魅せられてたの。
まさか、本当に殺人をできるとは……神様、この時代にわたくしを存在させてくれて有難うございます!
「ダガー、貰った」
「ソードブレイク!?」
剣と剣が重なり合う。何の音も無い空間に破裂音が響き渡り、空がざわめく。快感ですわ。
しばらくは、本当の力をセーブして滑稽なピエロを演じなければと悲観的になっていた所ですのよ!
さてと、殿方の武器は……どれくらい在庫があるのでしょうかね?
まずは一本。お釈迦様。
驚いていますわね? 彼は、この武器を知らないのかしら!? ほらほら、接近戦で銃は愚作ですわよ!
次は何を出すのでしょうか? まさか、ワインダー程度の武器しか持っていないなど仰らないですわよね!?
じれったい殿方は嫌いですわ! 速く本気を出しやがれ!
「くっ! 速い! 武器を出す暇が……無いわけが無いだろう!」
『何ですって!? この男、わたくしの攻撃を回避しただけじゃなくてわたくしの腕を握って引っ張ってわたくしの体勢を!?』
地面が前に? あぁ、わたくしは銃身を崩して転倒しているのですわね?
この男、強い! 不味い! 間違いなく彼は、次の得物を召還していますわ! この体勢では、迎撃がっ!
「意外と弱かったなあぁぁぁぁぁぁ!」
「甘い……反吐が出るほど甘いですわよ! わたくしを出自の良い温室育ちの小娘だと思っていますの!?」
振り向く。既に刃は、胸部付近に近付いている。回避も打ち払う事も不可能ですわ!
でも、目の前の一撃で即死する事はこの世界では、先ずありえない! 貴方なら分るでしょう?
この世界で歴戦の戦士になるには、捨て身の先方も取れねばいけないこと。
わたくしは、右手に持っていた相棒を放し私の胸元に減り込んだ刃を抜こうとするリノウェイの手を掴む。
全力で! メキメキと音がするほどの握力の限界で!
そして、形振り構わず体のバネを限界まで利用した速度と重さの最高に乗った激烈な頭突きを彼の額へと叩き込む!
「ぐるあぁっ!? かっ……あぁぁっ、ぐっ……」
「へぇ、サンクチュアリですの? 中々に良い物持ってますのね? では、止めと行きましょうか?
自分が大金を払って入手した武器で死ねるなんて何て乙なのでしょうね? あら、祝福しているのかしら?
夕焼けのコントラストが綺麗ですわ!」
リノウェイの額の皮膚が裂け大量の血が噴出している。強烈な苦痛に彼は、悶絶しながら絶叫し続けていますわ。
全く、この殿方は、強いのですが大袈裟で情けないですわね。
何だかこう、組んだら楽しそう……はぁ、何をつまらないことを考えてますの?
この素晴らしい演出を終りにするのはエンターテイメントとして最悪ですわ!
では、ご機嫌ようリノウェイ。
しかし、わたくしの振った刃は届かなかった。正確には何かに打ち払われたのですわ。
目の前の殿方とわたくし以外に人間は居ないはず。かと言って人間以外にそんな器用な真似ができるはずが。
まさか、受付嬢達ですの!? 否、有りえませんわ。領分を越してますの!
目の前の殿方は、情けなくも悶絶……!?
手? 背中から……第三の手が!? どこのB級ホラーですの!? それともとある魔術のインデックスですかしら!?
笑えませんわ! 何なんですの!? その鉄錆び色の汚らわしい乾燥した腕は!
ぐっ!? 捕まれた! 顔を……握り潰す気ですの!?
「合格」
「は?」
何のことですの? まさか、最初からわたくしを試していたとでも言うのですか!?
「アンタは、世界のルールを破る資格があるってことさ」
「あぁ、現実も非現実も分らないんですわ……わたくし。だから、許してくださいませ。世界は、壊れているほうが好きですの」
わたくしは、唯、自らの感性に従い握手を求める彼の手を握った。
⇒Part7へ