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Re: 風プロ パラノイア 〜Ep1〜 2−2執筆中 ( No.31 )
日時: 2011/07/31 21:59
名前: 風(元:秋空  ◆jU80AwU6/. (ID: COM.pgX6)

Episode1

Stage2「物語の歯車が動き出す……アストラルと言う名の檻へようこそ」Part2

  平成二十三年七月十一日月曜日 二十時十五分————

「ごちそうさまでしたぁー」
  
  お茶の間に響く溌剌とした声。
  博樹と別れ帰宅した不知火は、夕食を終えると勢い良く立ち上がり自分の茶碗を持って台所に向かう。
  台所で自分の食器を手早く洗うと彼女は直ぐに、二階に有る自室へと向かった。
  そして、直ぐにPCを立ち上げる。 画面が出るまでの間に彼女は、博樹にメールを送る。
 
  『先ずはカキコに行って他の人達も誘って見ようよ?』 メールにそう、書き込んで送信する。
  直ぐに、彼からの返信が来る。 液晶画面には、肯定の言葉が短く乗せられていた。
  よし!と、小さくガッツポーズして彼女は、立ち上がったPCの画面を見詰ながら早速、インターネットに接続する。
  お気に入りをクリックし小説カキコに飛ぶ。 
  其れと同時に、雑談掲示板の方で「オンラインゲームに一緒に参加してくれる仲間を募集」という事でスレッドを建てる。
  この間、僅か夕食終了から五分半。 そこそこのタイピングスピードと言えるだろう。
  最も、アストラルと言うゲームでは、タイピング技術などほとんど関係が無いのだが。
  スレを掲示板に掲載させると彼女は、参加者がくるまでの時間潰しに、今サイト内で執筆している小説の更新を開始する。
  四十分程で試行錯誤の末に出来た四千文字程度の文章を掲載する。 そして、希望を抱き雑談掲示板に戻る。
  思った以上の数の賛同者が居るようだ。 安堵の溜息を彼女は漏らしレスの確認を開始する。

『へぇ、あの風達が嵌ってるゲームか? 俺も興味有るな! 
是を期に参加してみるかな? 参加するときは、HN、pikoって変えるけど!』

  先ず、一つ目のレスは、ゆnと言う風と親しい人物だ。 彼女は、カキコ歴が長く人付き合いを大事にするタイプなため人脈が広い。
  彼女の名前がスレの一番上に載っているだけでゲームに参加しようかなと言う声が聞こえてくるレベルだ。

『仁都です。 初めまして……あのゲーム、有名ですよね? 風さんがやってるんですか!? うわぁ、やってみようかな?』
『ゲーム大好きでさ。 アストラルとかマジやべぇから大歓迎!』

  ゆnに続くのは、仁都に玖龍とこれまた、風と縁のある面々だ。
  特に玖龍は、小学六年生とは思えない文章力で彼女に一目置かれている存在だ。
  その後も、山下愁や朔、翡翠、朱雀の順に彼女を知る面々が名を連ねる。 画面を見ながら不知火は小さく呟いた。

「もて過ぎだぞ風さん……一体、どんな姿なのやら気になりますなぁ」

  そんな、軽い嫉妬の入った愚痴を言いながら彼女は、返信の為にキーボードを高速で叩いていく。
  肯定的な者達のやる気に火を付ける様な文章を脳内で構築しながら。
  そして、返信の所をクリックする。 少し待つと新しいレスが、幾つか到着していた。 
  ばっと目を通す。 中には、風や月読愛のレスも有った。

『迷っているのなら一度試して見れば宜しいのですわ。 だって、体験と予想とは全く違うものですもの?』

  不知火が、返信するより僅かに先に届いた愛のレス。 彼女も変身中に書いた言葉だ。 彼女は、愛に心の中で感謝した。
  そして、『面白くなかったら改めてログアウトしてやめれば良いのさ』と言う言葉を掛けてくれた風にも感謝の念を現す。
  そして、九時半までの間に集まったのは、最初の方でレスした七人と、妖、焔錠、涼儀の三人を合せた十一人となった。
  無論、博樹と不知火も参戦する。 総勢十二人と言う事だ。

「十人か……結構集まったな」

  先ず先ずの結果に彼女は、グッと伸びをする。 その時、携帯の着メロが鳴り出す。 
  彼女は、慣れた手つきで形態の液晶を見て相手を確認し携帯を耳元に当てる。
  毎日のように会う幼馴染の元気な声が聞こえてくる。 彼女は嬉しくなり優しく笑う。

「そうね。 アストラル……楽しみだわ」

  カーテンを開け月に祈りを捧げるように目を瞑って合掌して彼女は言う。
  其れに対して、博樹は、小さく「そうだな」と、彼女に合せるように言うのだった————……
  そして、直ぐに彼女は、アストラルのホームページを開く。
  会員登録をしてキャラクタ作成をして、今日にでもアストラルを試したい。 自分の立てたレス内でそう、書き込んだ。
  皆、賛同して十人は今日、アストラルに集合する事が決定した
。 アストラルのホームページが開いた。
  禁断の扉を開いてしまったと言う事実を彼女たちは、知る筈も無い。
  一方、ホームページを前にした彼女には、言い知れぬ高揚感が襲っていた。 
  ついに、あの話題のオーバークオリティを体験できる。 
  体中が沸騰するようだ。 彼女は、体の火照りを癒そうと博樹に電話を掛ける。

「よぉ、今更、ビビッてるのか?」

  彼の的を射た発言に内心、ドキッと心臓を鼓動させながらも彼女は冷静を取り繕い答える。

「違うわよ……今、あたし……遠足前の小学生の気分なの。 目がギラギラしてる!」
「そうかい……実は、俺もさ! ハーレム天国なんて組織があるみてぇじゃねぇか!」

  不知火は、今の自分の現状を端的に表現する。 すると、自分も同じだと彼は、笑いを含んだ声で言う。
  それに続く幼馴染の答えに、内心、苛立ちながら彼女は、冷静に、「アストラルで会いましょう」と言い電話を切った。


                 ————好奇心とは、時にその身を滅ぼし、時に、新たなる世界の扉を開く————……

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