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- Re: パラノイア Ep2 3-4 1/22更新 アンケ中 ( No.324 )
- 日時: 2012/03/10 00:23
- 名前: 風猫(元:風 ◆Z1iQc90X/A (ID: R33V/.C.)
- 参照: コメントは少し待ってください(汗
Episode2
Stage3「エンドレス・バトル・オブ・パラノイア」Part5副題『狂愛者Part1』
(一人称視点:HN・ストレンジア 本名・夏目レイン視点)
「どうだ……回復できない恐怖は?」
巻き舌気味に叫びながら俺様は成神に斬りつける。
本来ならすぐ治まるだろう痛みがいつまでも続くことに苦悶し動きが鈍っていて奴は回避できない。
通常ならかわせただろうが……そんなことはどうでも良い。
奴の左肩に俺様の刀は命中しばっさりと切り裂き、血が放物線を描く。
正直、この世界じゃ血なんて当たり前でさ。
基本的にダメージ量に応じて多少ラグが出来るがすぐに塞がるし皆感覚が麻痺しちまってるがよ?
相当ヤバイんだぜ? 痛みは脳内を駆け巡り警鐘を鳴らし体中の筋肉は否応なく強張って次の攻撃まで受けちまいかねねぇ。
更に普通の人間なら致命傷の傷でも死なないって言っても俺達はヒットポイントが無くなれば死んじまうんだ。
逆に言うとだな。どんなしょぼい傷でも相手のレベルが高くて補正がかかって体力の損耗具合が激しければ死ぬ。
同格程度の奴同士の戦いじゃ先ずおこらねぇが案外シビアだろ?
頂点とか祭り上げられてるが何時自分より強い奴が出るかなんて分らねぇ。
俺様としては受付嬢共がどうにも臭うね! 実はラスボス格でしたとかってな……
だから……鍛え続ける。強さを求めて悪いことなんてありゃしねぇ。そして、求めた結果俺は知った。
圧倒的な損傷が残り続けることはな。
唯それだけで相手に精神的苦痛を与えそして、外気からくるウィルスによる毒性のダメージも与えるんだよ。
「どうした? だんまりか?」
精神的ダメージと単純な傷口の裂傷から響くダメージで成神は防戦一方だ。
俺様としてはみずからの編み出した固有技“ペインダム”を褒めてやりたい所だが……
幾ら何でもこんななぶり殺しじゃぁ詰らねぇ! 久し振りにまともに戦える相手だ!
色々試して自分の能力を知るのも悪かねぇ! 一撃で潰れるような奴相手じゃ試したいことも試せねぇしな!
「……良く喋る奴だ。弱い奴ほど良く吼えると誰かが言っていたな。
確か、自分を強く見せることで精神的防壁を張るとか。負け犬極まれりだな」
疾風の剣戟で奴を襲う。加速する。最終段階まで行き奴の身体速度では到底裁ききれないほどに。
徐々に成神の体力がそがれていくのが分る! だが、あいつは幾分の焦燥感も無く憮然とした表情で俺様を睨む。ただ、睨む。
そして、小さく口を動かして言葉を吐く。その言葉は帰結。俺様は最初にこいつと戦う前に言ったのだ。
言葉は要らないと……先に禁を破ったのは自分。言葉は相手を惑わす刃で使わない手は無い。
本気で言った台詞でもないのにこいつは素直に!? あぁ、馬鹿な野郎だぜ。悲しくなるほどにだ……
「悲しいね。お前は何で武器を振ってるんだ? 根本から間違ってるんだよお前はさ」
本当に俺様を仇と思って殺したいのならルールなんて破って自分の戦いを有利に進めろ。
それをしないお前は何なんだ? まさか、そんなド直球で勝てるとでも思ってるのか?
格下相手ならいざ知れず同等或いは僅かに上と称される男を相手に……それはねぇだろう?
例え今までの評価に至る間に本気を出せていなかったとしても俺様だってそれは同じわけだしな。
「成程。つまりストレンジア……お前はこう言いたいのだな。夏目ルキア即ち冬音の仇を討つなど愚かしいと……
ならば言おう。今の俺にそれを宣教師のように説く貴様こそ愚かしいと」
おいおい、違うぜ。まぁ、あの人間のクズのために戦うってのは少しどうかと思うが。
人を愛し護るために戦うってのは男として最高に格好良いじゃねぇか!?
だあぁ、俺様が言いてぇのはだなぁ……つまり、本気ってのは出しうる全てを使うことだろうがってことなんだがよぉ!
「確かにな。対象がアイツじゃなかったら拍手喝采すべき理由だが庇護する対象があれじゃぁな……」
食いついて来い。お前にとってこれを否定されるのは最も嫌なことだろう?
お前が今更こんな揺さ振りで心動かすとは思わないが少しは動きが泊まるはずだ。
その間にもう一太刀入れさせて貰うぜ!
おらあぁ! 胴体頂いたあぁぁぁっ……何っ!?
これは……シールドアイテム? コイツ心の中でさえ漣(さざなみ)一つ立てちゃいねぇってことか!?
俺様の一撃を食らいめきめきと音を立て砕け散る防御壁。シールドアイテムコルドという最上位防御専用道具だ。
どんな強烈な一撃でも絶対に一度は防ぐというゲームには良くある奴だが……入手難易度は高い!
目の前の奴は確かに実力者だが、これほどのアイテムはそう、幾つも所持していないはず……
良いじゃねぇか! 思っていたよりはやる気があるらしい!
戦いの刺激で体中の血液が沸騰するようだ……この高揚感を消しちまうのは勿体ねぇ……さぁ、一気に戦闘の段階を上げようぜ?
観客相手にパフォーマンスはもう良いだろう……って、おい! 成神の野郎、何突っ立ってやがる?
「お前……冬音のことは綺麗さっぱり忘れたんじゃなかったか?」
「馬鹿野郎。あんな手の掛かる刺激的な奴忘れられるかよ……」
おいおい、今それを聞くのかよ成神? 出鼻を挫かれた感じだぜ。あーぁ、忘れられるわけねぇだろうがよ?
俺様ぁ、何度もあの身勝手な馬鹿女に殺されかけているんだぜ……
始めてあいつが可笑しいと思ったのは幼稚園にルキアの奴が入ってきてからだ。
あの女、幼稚園に進入した猫の頚動脈を爪で引き裂いたんだ。そりゃぁ、猫も抵抗するさ。
だがあいつは痛みでやめたりはしなかった。やめるようならまだ人間味もあったが……
あいつは、手から血を大量に流しながらも猫を絶命させた。あの日以来あいつは魔人だ。
対象はドンドン変化していった。蛇や蛙、ペットショップで安く兎を買って殺したことも有る。
小さな子供だから免罪され続けてきたし、家名の端だと家族は秘匿し続けた!
正直、幼稚園を先に卒園したときはホッとしたね。
周りから恐怖の目で見られていたし……何より俺自身妹が怖くて仕方なかった。
そして俺達はが小学校で再会した時。あいつは、学業は優秀で運動神経も優れていていつも周りの羨望の的だった。
祭り上げられる理由はその優秀さだけじゃなくて狂い具合にも有ったんだろうな。
皆表面だけ笑って妹からは逃げていたさ。そりゃそうだ。猫とか簡単に殺そうとする奴だぜ? 近付きたくないってのが本音さな?
そんな訳で我が妹はいつだって祭りたてられて特別扱い。
いつの間にかその美しい容姿に目をつけたカメラマンに雇われるようになって子供ニャ不釣合いな大金持って何でも欲しい物を買った。勿論、解剖する動物の費用も自分で賄っていたさ。
そんなこんなであいつは自分が全能なる神になったような陶酔に陥り俺様の首を斬ろうとした。
言葉喋らぬ下等動物じゃもう満たされなかったんだろうな。俺様は常に妹と相部屋だったから神経が研ぎ澄まされていて……
あいつの攻撃を回避することが出来たが、あいつの爛々とした狂気をはらんだ表情は今も忘れられない。
確かに、俺様は妹という恐怖から心を護るために強がっていたのかもな。その後も何度もあいつは襲撃してさ。言うんだよ?
「お兄ちゃーん、お兄ちゃんの死体の肢体をズタズタに切裂いて私食べてみたいの? ねぇ……だめ?
駄目じゃないよね? 私それが最高の愛の形だと思うの……ってか、アンタみたいな下賎の民が何言ってもあたしは神だけど」
その倒錯した口調はあいつが言うと現実的で。あの時の俺様はいつだって夜中震えて居たさ。
胃潰瘍とか眩暈とか……本当に辛かったな。今でも涙が出るぜ。
そんな妹が、いつからかぱったりと俺様を夜襲しなくなった。なぜだと思う?
俺様じゃない他人に対象をシフトしたのさ。あいつの殺人は相当な手際でよ。
この殺しの感覚を味わうことの出来る刺激的なゲームに出会うまで六人は殺してきたようだ。
表沙汰にならなかったのは妹の手腕だろうな。まぁ、そんな訳で俺様はあんな狂った奴に近付くことを是をしないよ。
成神って男が嫌いじゃないからなおさらな……
「防御壁って少し前に言ったな……その通りさ。俺様は……妹、お前の愛する夏目ルキアに恐怖していた。情けない話さ」
本当に情けない話だぜ……それがいつの間にか俺の世界になって。 このゲームの中じゃ誇張するなんて一人称に様なんてつけてさ……世界中が敵に見えて世界中を睨みつける刃みたいな気してな。
「そうか。忘れていなかったか。良かった……本当に忘却の彼方にあるのなら溜飲も下げれない」
成程な。そういうことか。殺す気は消えていないらしい。宜しいことだぜ。殺さずなんざ余ったリィ!
このゲームの趣旨は、全員で手を取り合って最後まで生延びるなんて微温湯の中で遊ぶものじゃねぇ……
怒りに狂うお前のその目がこれからのパラノイアには必要なんだ……
どうやら、テメェも火がついたようだな。固有技の発動を察知したぜ。
どんなものか……見せて見やがれ!
「なっ……?」
どんな攻撃にでも対処できる中段の構えで俺はあいつの出方を待つ。
もしカウンター型の能力なら危険だからだ。だが、予想は外れたらしい。寧ろ逆、速攻の技!
俺様の視界から野郎は煙のように消えうせ俺様の肩から腰の辺りまでが深々と切裂かれる。
体中に痛みが伝達し強烈な一撃が入ったことを知らせた。宙を鮮血が弧を描き舞う。
あぁ、分った。この能力の正体は単純限りない。そう、速度の強化!
それゆえに強烈な力だ……捉えられなければ意味は無い。回避も防御もできなければ体力はそぎ落とされるばかりだ。
成程な。鈍重な海賊だからこその選択ってわけか!
「良いね……良いね良いね! 最高だぜ! そう言う分り易い奴が一番燃えるんだよ!」
「そうか……俺もだ!」
あぁ……近いな。
決着のときは近い……
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