ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re:  パラノイア Ep2 3-5 2/12更新  アンケ中 ( No.335 )
日時: 2012/04/24 20:10
名前: 風猫(元:風  ◆Z1iQc90X/A (ID: .M49B5Sc)
参照: http://mb1.net4u.org/bbs/kakiko01/image/44jpg.html

Episode2

Stage3「エンドレス・バトル・オブ・パラノイア」Part6副題『狂愛者Part2』
(一人称視点:HN・成神 本名・桐生秋継視点)



  切り結ぶ。結んで結んで結びまくる。繰り返される連撃の雨。澄んだ金属音が強烈な衝撃音に混じって僅かに聞こえる。
  それを耳に入れる余裕。勝てるぞ。勝てる、確信だ! 俺の努力は無駄じゃなかった! ストレンジアめ。 俺の攻撃に防戦一方じゃないか! ははっ、ヒットポイントバーがドンドン殺がれて行くのが手にとる様に分るぞ! 分る……分る!
  俺の宿願の達成は近い。冬音……冬音冬音冬音冬音冬音冬音冬音! お前の兄貴を殺して俺はお前の永遠になる!
  例えお前が死んでいても……俺の中でお前は永遠に生き続けてるんだ! 
  知るかよ……今は俺がルールだって話だよ! 俺ルール第一条……俺が良かれと思ったことは女神も良しと思う!
  あぁ、勿論女神は冬音に決まってるじゃねぇか?
  「あぁ、昔は冴えない普通の善良な一市民ナウ……今? 
  今は違うぜ。パラノイアの中に入ってきたんだ……俺だってパラノイアなのさ」
  「随分と饒舌になったもんだな? しかも、先ほどまでとはうって変わって狂ってやがる。楽しくなってきたな成神!」
  ウルセェなぁ……語るなよストレンジア! てめぇは俺に一方的にやられて絶望に表情を歪めながら断末魔も上げずに死んでいけ! 俺ルール第二条……この世の全てのゴミの中で一番のゴミはてめぇと葵だってことだ!
  楽しくなってきた? 一応応えておいてやろう! てめぇが死ねば俺の心はローリンハーッツ! 最高気分上々だぜ!
  死ねや。死にやがれ……ゴミ野郎! 死ね死ね死ね死ね死ねシネシネシネシネ死ね死ねシネ死ね死ね死ね死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死……ガガガガガガガガガガガガガギャハハハハハハハハハハハッッッッッッ——!
  HPバーが四分の一を切ったぜ……このまま一山もなく一方的に死合終了か!? 良いぜ? 俺は、それが最高だ!
  俺の……俺のおぉぉ、女は! てめぇに何の宣告も無く一発で殺されたんだ! 圧倒的な力の差が有ったから……
  ゴミ相手には上等すぎるじゃねぇか!? ゴミ! ゴミッ! ゴミゴミゴミゴミゴミ屑野朗がッッ! 
  存在をさっさとこの世から消せ!
  「いけんなぁ……幾ら速いって言っても……攻撃が単調で事前予測が簡単だ」
  「なっ!?」
  決める。斧技最高連続技、ブレイクンアックス……連続回数八十連打が決まる瞬間だった。
  ゴミ野郎め……後ろに跳び退って回避しやがった。野郎の双眸は余裕に満ちてやがって。気に食わない!
  そんな余裕の目なんてしてるのは可笑しい! 自慢げに……一回攻撃を回避した程度で。
  余裕見せるとか、追い込まれてる自覚がねぇのか? てめえは昔からそうさ。あぁ、余裕のある目ってのがムカつくんだよ。
  冬音は別さ。俺の太陽だ。何よりも素敵なことを俺に全て教えてくれた……砂漠のオアシスにして銀翼の天使。
  それに対して目の前のストレンジアは、屑の中の屑さ。何せ女神を俺から奪った調子乗った……人間失格や郎だ。
  その目を向けるな! 追い詰められているのはてめぇだ! どんなときでも俺にならどんな状況でも勝てるとか……そんな風に俺を見下してる奴ばっかりでムカつくんだよおぉぉぉッッ!
  あっ? 何だ……視界が遮られる。目が……目が焼けるように痛い!?
  これは!? 閃光弾! 畜生……そのために距離を取ったのか!? 全力で守備に廻ってやっと凌げる攻撃の中よくも冷静なもんだ……
  やっぱり、ムカつくぜ。
  「……下らない目晦ましの後は下らないナイフ攻撃かよ……らしくないにも程があるぜ」
  「生憎と。戦いが楽しければ俺様らしさとかどうでも良いのさ」
  あんたの投擲するナイフなんざ全て止って見えるんだぜ俺は? 
  何をしたいか図りかねるが全て弾いててめぇを叩き斬って終りにするぞ。先ずは一本、二本……二十本!
  あぁ、飽きた。まだろっこしいぜ。投擲武器カウンタースキル発動! テメェのナイフで貫かれて悶絶しやがれ阿呆が!

  「あー、慣れないことするからよぉ」
  ドス……
  ドスドスドスドス! 小気味の良い音を立てて回避も防御もできずゴミは正面から全てのナイフを受ける。
  当然だ。今の俺の能力は相手の投擲武器にも有効だからな。ご賞味いただけたかな? 
  もう、お前の時代は終りなんだよ。終焉終幕うぅぅ、調子乗って鍛え忘れてたお前の……!?
  「あーぁ、確かに慣れないことはするものじゃねぇなぁ? 咽たぜ」
  『なっ!? 壁の向こう!?』
  声。
  刺さっている奴からの声じゃない。だが、紛れも無くストレンジアの声だ! どこだ……
  そもそも何をした!? 考えられるのは目の前の野郎がダミーってことだがそんなアイテム……
  そうか! アイテム生産スキルに秀でた葵のバックアップ品! そんなものまで使って何を仕込んだ!?
  咽たと言うことことは飲料物か! 何だ? スピードアップ系か!? 肉体全体強化……
  吹飛ばされきれていなかった壁がチーズみたいに切裂かれて俺に迫り来る。
  速い! 先程の奴の動きの数倍! だが、今の俺なら容易く対処できる。何がしたい!? 
  こんなの相手の速度を見切るまでの十数秒の稼ぎにしかならないぞ!
  「しぶといんだよおぉぉぉぉ!」
  弾く。相手の速度を計測しきれるまでの間、奴の攻撃を弾き続ける。
  一撃一撃が重くてヒットポイントバーが少しずつ削られるがアイテムの効果で上がった攻撃速度は自分の反射神経の領域を超えていて回避する事は不可能らしい。だが、十何病でやられるほどコッチは追い詰められちゃ……
  何だ? ストレンジアの野郎の表情が。悪寒!? 追い詰めているつもりで追い詰められていたのは俺だった……みたいな?
  有得ん! 有り得るはずが……
  「ぐっ!?」  
  突然、俺の傷口が疼く。尋常ではない痛みが体中を襲う。それは、奴の攻撃のせいで小さな痛みは永遠続いていたが……
  その痛みが急激に増大された感じ! これは!?
  「ストレンジアアァァァァァァァァァ!」
  「ペインダム……第二段階臨界点発動だ」
  血流エフェクトが急激に増大していやがる! 傷口に走る激痛も先程の比ではない! 臨界点……これが奴の切り札!
  恐らくはこの能力は時間制限式ということだ。如何に個人スキルとは言えゲームの轍に有る限り強力すぎる業にはタイムラグなどのリスクが無ければいけないということ。俺の相手の速度解析というのもそのリスクの一つと言って良い。
  ストレンジア……スト、レンジィアァァァァァァ! イテェ、イテェゾオォォォォ!
  ッッ——? グアアァァァァァァッ。

  「現実なら真っ二つなんだけどなぁ。ゲームじゃ流石にそうは出来ないわなぁ」
  深々と体の全てを薙ぎ払うように奴の太刀が俺の体を断絶する。ペインダムとやらの痛みと相俟って脳天が突き抜けそうだ。
  涙が出そうなほどに痛い。畜生。許せねぇ。この俺をてめぇ如きがこんなにして良いはずがねぇ。
  お前だけは……許されないはずだ。本来なら胴体が二つに分かれている所だろうがそれはゲームの配慮らしい。
  手や足は吹き飛んでもヒットポイントがある限り頭部と胴体の切断や胴体の切断といった事は出来ない。
  だが、ダメージは当然高く痛みも絶望的なほどだ。動けない。正直、死んだ方が楽だと思えるダメージだ。
  「さって、とぉ。獲物はもう動かせねぇよな? 止めと行くぜ」
  逡巡。このままでは負けると言う非望が脳内を駆け巡る。だが、奴は一つ大きなミスを犯した。
  本来なら武器を使わせないための配慮と言えるだろうが。奴は俺の相棒カルナッツォを踏みつけた。
  こと俺にとっては抜け道の在るシチュエーションだ。
  あぁ、奴は俺の能力の本質に気付いていないらしい。まぁ、前兆とかはねぇし当然か。
  「ふっ、ふふふふふ。悲しいかな。止めにはならなそうだぜ」
  「何を言ってやがる?」
  俺の固有技ソニックブーム。漢字にすれば超振動活用法って所だが。
  こいつは実は速度アップの能力ではなく電力による神経パルス伝達速度の強化と、電力による地面と靴との摩擦係数の低下によって強力な速度と筋力を得ることに帰結しているんだ。ゆえに言うなれば電力の操作と言える。
  電気振動を限界にして鉄にそれを収束させれば……強烈な振動が奴の脚を伝い足を破壊することも容易いのさ。
  「俺の固有技はな。速度アップなんて単純なものじゃないぜ?」
  本来の力の使い方じゃねぇから少し体力も使うが止むを得ない。今度こそ決着をつけようぜストレンジア?
  「ハイパーバインド!」
  「なっ!?」
  尋常じゃない振動が走り空間に一瞬甲高い音が響きゴミ野郎の汚ぇ足が吹き飛ぶ。
  骨も肉も混ざり合って最高に気持ちの悪い様だ。リアルにも肉の千切れた様や焼け焦げた皮膚、大腿骨が見えてやがる。
  このゲームの無駄にグロイリアリズムは今に始まったことじゃねぇからな……全然驚かねぇんだけどよ?
  「止めだ」
  体感をなくしグラリとよろめく宿敵に俺は相棒を一閃する。間違えなく止めの一撃になるだろう。
  あぁ、終ったよ冬音。お前も俺も憎んだゴミ野郎の終焉だ。宿願は叶ったよ。 
  目の前の男が死ぬことには何の感慨も沸かないが、達成感は有る。血の臭いさえもリアルに感じさせるこの世界だが。
  こんな地獄のような死線を走ってきて良かったと俺は思ってる。
  なんてな。唯大好きなのさ。殺し殺され。笑えるぜ。

  「あぁ、勝った。勝ったよ冬音。お前のために……」



Part7へ