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Re: 風プロ パラノイア 〜Ep1〜 3-1執筆中 ( No.77 )
日時: 2011/07/31 22:22
名前: 風猫(元:秋空&風  ◆jU80AwU6/. (ID: COM.pgX6)

Episode1

Stage3「楽しもうぜ? 基本なんて良いじゃない適当で? 基本を疎かにすると死にますヨ?」Part1

  ————始まりは、唐突に来た。 引き金となった俺達は、罵倒の対象になる事を恐れた。 しかし、其処に有ったのは激励だった——こんなゲームで死人が出るのは嫌だ。 でも、楽しもうぜ?——
  皆の思いは、少なくとも外面上はそうだ。 だから、生き残ろう————


  そう、思ったんだ     トレモロより——


  ギルドの出入り口が開閉可能となると同時に彼等は、外へと出た。
  別に、風に当りたいなどと言う理由ではない。 それも、多少は有るが。 
  それ以上に自分達の体が、どれだけ人間に近いかを確かめたかったのだ。 今後のために。 もし、病気や怪我をする様ならそれに費やす金が必要になるだろうし、腹が減ったりのどが渇いたりすれば食費も必要になる。 
  眠気が襲うのならば、睡眠を取る必要も有るだろう。 寒暖の差を感じるのなら恐らくは、布団などの寝具も必要になる筈だ。
  そして、それらの予測は全て当っていた。 ひとしきり歩いていると時々、風邪をひいている者や怪我をしている者が居た。
  より、以前より現実味が増した結果と言えるだろう。 空腹や眠気も溜るし肌寒い。 
  どうやら、此処で生きていく為には、水分や食料……そして、睡眠を取る場所が最低限必要なようだ。
  嗜好品や生活必需品も此処で暮らす上では必要になってくるだろう。 
  それらは、全てこの世界の通貨で売買される。 詰り、必然、この世界で生延びるには、危険なクエストを行わなくてはならない。

  一応の状況確認をして皆は、ギルドへと戻った。 
  ギルドを出る前に風性質に聞いた情報によればチームとして動けるのは三人一組だとのことだ。
  彼等は、一旦、ギルドへと戻りチーム編成をすることにした。 帰路の間にも何人かは、既にグループを作っていた。
  トレモロと凡、そして、山下愁と妖、最後にpikoと玖龍の六人だった。  
  最初に来た数は、十二人だったが焔錠が抜けて十一人で行動していた為、一組、二人だけの組が出来てしまうが。
  しかし、二人一組はになるのは、凡とトレモロの二人だろうと他の皆は、無意識に思い空気を読んでいた。
  
「じゃぁ、チーム別け始めようか?」

  意外と仕切りや気質なのか、朔が、ギルドの扉を抜け周りに人が少ないスペースに行くと口を開く。
  「言われずともそうするだろう」と、涼義がぶっきら棒に言うと、彼女は強く涼義を睨み返した。

「へぇ、君、楽しそうだねぇ? じゃぁ、あったしと手ぇ組もう?」

  アストラルに入った最初の頃と比べて全く違う雰囲気を漂わせる彼女に、逡巡し沈黙する涼義。
  しかし、そんなクルクルと変る彼女の表情に興味が有る、もとい、壊れ易そうで面白そうだと思い彼女は、申し出に了承する。

「悪くないね? アンタもサディストだろ? どっちがスゲェか勝負だ」
「負ける気は無いよ……あたし?」

  瞬間、凶悪なコンビが誕生した。 更に、それを見て玖龍がpikoから離れ彼女等と合流、そして、pikoは、シンパシーを感じた妖達と合流する。
  その空気と三つの組が既に出来たと言う事に、気圧される様に背中を合わせる女達が居た。
  仁都と翡翠、そして、漆黒のように黒い瞳と二つ結びの黒髪の凛とした顔立ちの少女、朱雀だ。
  本来の気の弱い気質同士なためか三人は、顔を向き合わせ直ぐにシンパシーを感じ徒党を組むこととなる。
  こうして、意外なほどに何の揉め事も無くチーム分けは終了した。 何も悩まず決定したこの四つのチーム構成。
  以外にも、良く周るのではないかと、トレモロには、確信があった。
  十一人は、チーム登録をしに、ノーヴァの元へと歩む。

「チーム登録に来ましたよッ!」

  小柄な玖龍が、カウンターに身を乗り出す。
  先ずは、朔と涼義、そして、玖龍のチームが前へと出る。 初心者受付嬢の女性は、無機質な声で応答し淡々と業務をこなす。
  何の摩擦も起こらず直ぐにチーム登録は終了し次のチームが、前へ出る。 piko、妖、山下愁のチームだ。
  矢張り、何も波乱は起こらず、朱雀達も直ぐに契約を済ませる。 最後に、トレモロ達が前へと出る。

「チーム登録ですね。 仲が良さそうな事で……有る意味、焔錠さんとやらが居なくて良かったですね?」

  面々のリーダー格と彼を認識しているのかノーヴァは、少々毒づくように祝福の言葉を口にする。
  其れに対し、彼は、嘆息する。

「出来れば、彼とも一緒に行動したかったけどな?」

  その言葉に、少し虚を疲れたという風情で瞠目するが、彼女は直ぐに正気に戻り更に毒づく。

「成程、例え十二人全員揃っていてもチームメンバーが女性なら問題なしと?」
  
  彼女の言葉に、「そう言う事!」と、満面の笑みを浮かべる。
  だが、その物言いは、彼女が自分のことを女性好きだと気付いている様な雰囲気である事に気付く。 
  もしかすると、彼女は、凡の事を形状的には、男の姿をとっているだけの女性だと気付いているのかも知れない。 
  十分有り得る話だ。 彼女は、コンピュータ側のソフトとして他のユーザーが知りえない情報を知ることが出来る。
  サァッと、彼の表情が青ざめる。

「凡様が女性なのは、最初から分っていますよ? ちなみに…………実は、焔錠様も女性です」

  矢張りそうかと、彼は、一旦嘆息する。 そして、その後に続いた言葉に、一瞬、愕然とし暫し後に、絶叫するのだった。

「えっ? えぇぇ!? え゛ェええぇぇええェェェェェェえええええっッッッッ!」

  全く、気付いていなかった。 
  真横に居る彼女などと違い最初から完璧な男口調。 男性的な態度。 全く、疑う余地も無かったのだ。
  彼は、狼狽する。 拙者などと言う口調で喋る実は、女の子な存在を手放してしまった事を……


             是から、始まる。 新たなる旅路。 何者にも変えられぬ稀有な経験が、待っている——————


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