ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 狂 気 の 鬼 ご っ こ ( No.162 )
- 日時: 2011/07/27 18:00
- 名前: 苺歌(いちか)元志乃 ◆2p8ap0KHic (ID: k5lEWJEs)
第16話
うそ…だろ…。京まで…!?なんなんだ…。もう俺ら終わりじゃねーか…。
俺の目に涙がたまる。
駄目だな、俺…。いつまでも泣いててもしかたねーだろ…。一番つらいのはレイナなんだからよ…。
俺は涙を袖でふき、隣の僚を見た。しかし既にいない。
「あれ?どこいっったんだ?」
あたりを見回してみると草むらの方から音がする。と同時に啜り声も聞こえてくる。僚…?
僚は右手に巻かれた包帯をおさえ、左手で携帯を見つめながら体を小刻みに震えさせている。どうしたんだ…。僚…。俺がわざと足音をたてて近づくと僚が力ない声で言った。
「みんな死んじゃったんだね。たっくんも…翼くんも…の…のんちゃんも…」
「あ…」
やっぱり僚もショック受けてるんだな…。希…お前の好きな奴だっけ?希もお前を好きなんだぜ…。前さ希がうれしそうな、でも少し頬を赤らめて言ってた。
『りょうくんのこと私本気ですきだもん』
それを思い出し俺は涙ぐむ。僚…。俺はお前を守る。それに美亜だって…。
「僚…希はお前が最後まで生きてくれることを信じている。かつ、お前のことをすきと生前いっていた。お前はその分いきねーとな!俺が守る!」
僚は安心しきった顔で俺に微笑む。
その顔を見て俺も安心したがそれも時間の問題だった。
僚の後ろには美亜がたっていたのだ…。
「クス…。おひさしぶり、春。りょっくん…」
「み、みっちゃん!?」
美亜は不気味な笑みをこぼしながら俺の方へゆっくり近づいてくる。
「何しにきた…。」
「クスクス。間抜けなあんたたちの死に様を見てやろうとおもったのに。
つまらないわねぇ…。」
何…!?俺は美亜の一言で心のどこかで怒りの火がついたことがじぶんでもわかった。こいつ…、人が死ぬのをそんなに楽しいのか…。何でそんな平気で笑ってられるんだ…。
俺は握り締めた拳を美亜に向ける。
そのとき…、美亜が悲しそうな切なそうな表情で俺を見ていたこと…。
俺はその表情で殴ることができずに拳をおろしてしまった。握り締めたまま…。美亜はまた小さくわらうと何も言わずにどこかに立ち去った。
「クソ…、僚…ここにいたら危険だとおもうんだ。逃げよう」
「うん…」
僚…お互い好きな奴を失うのは苦しいことだ。失うといっても俺と僚の場合はちがう。僚の場合は大切な人を完全に失ってしまったこと…。
俺の場合、また不完全だってこと…。
意味はわからない。
だがわからなくていいとおもう。
今はお互い強く生きていくしかない…。
そしていつか…。
鬼ごっこを俺が止めてやる