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Re: 黒蝶は夜に輝く ( No.13 )
日時: 2011/07/16 11:54
名前: 華世 (ID: 9QYDPo7T)

♯4 黒のキングは夜嗤う。



 時刻は午前0時を回り、眠らない若者達をカジノのネオンが誘惑する。
 そのカジノの奥に、『闇のギャンブラー』と呼ばれる青年の姿があった。

「……チェックメイト。君の負けだ」

 勝ち誇った笑みを浮かべながら、青年——駒崎裕介は赤ワインを飲み干した。
 逃げ場が無くなった男の駒は全て黒で囲まれている。
「さあ早く、賭け金を渡してくれ」
「うぅ……」
 退屈そうにそっぽを向く裕介に、男は悔しそうに金を渡す。
「30万か。相当の自信があったようだねぇ……」
 半分は呆れ、もう半分は喜びと、二つの感情が入り混じる。
 最後、男に自信過剰な一言を吐き捨てた。
「……俺に勝てる訳がないじゃん」
 その一言は本当でも嘘でもあり。
 そして、只の強がりでもあったのだ。


 6年前の今日、裕介はいつもの様にカジノに溺れていた。
 賭け金を段々と積み上げ、運に任せるルーレット。
 何故か外れることも無く、見事狙った場所に入る。
 外れない事が不愉快なのか、裕介は特別喜ぶ事はしなかった。
「当然だよね」
 独り言をさらりと呟いて、立ち上がった瞬間だった。
 一人の少年によって、行く手を遮られる。

「すいません……貴方にお願いがあるんです」

 漆黒の黒髪に、整った顔立ちの少年。あまりにも場違いすぎる。
「で、何の用かな?」
 裕介の問いに、少年は淡々と答えた。
「僕と……勝負をして下さい」
 自信を含んだ少年の微笑みに体を強張らせたが、裕介も笑って返した。

「その勝負、受けて立つよ」

 この一言が彼自身の運命を大きく変える事になる————。