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Re: 黒蝶は夜に輝く ( No.27 )
日時: 2011/07/24 20:22
名前: 華世 (ID: 9QYDPo7T)

♯6 黒蝶は未だ飛び立たず



 窓から太陽の光が差し込む部屋の中で、魅栗は目を覚ました。
 隣の恋華の部屋から騒がしい聞こえて来た為だ。
「ふふ、今日も元気なのね……」
 独り言を呟いて、恋華の姿を思い浮かべる。
 そして少しの間、幸福感に浸っていた。


 黒田魅栗は誰よりも彼女を愛している。
 それは、自分自身もよく解っている事だ。
 魅栗が彼女を愛す理由の一つとして“自分を愛すことに繋がる”という信念を抱いているからである。
 
 『双子は二人で一つ』

 そういう考えを持つ人間も多いが、彼女達は違う。
 実を言うと、彼女達は双子ではない。
 つまり、血の繋がらない“赤の他人”なのだ。
 何故、恋華が此処にいるのかは後のお話————。


「……ゴホッ……ゴホッ!」
 静寂だった部屋に、魅栗の噎せ返った声が響き渡る。
 元々持っていた病気が発症したのだ。
 
 彼女は幼い時から病気持ちで、そんなに長く生きられない事を理解していた。
 だからこそ、自分を愛していたかった。
 死ぬその瞬間まで、自分を愛していたかったのだ。
「……愛されないのは孤独よね」
 魅栗は愛されない事を“孤独”と感じている。
 その為、彼女は“傷つける”と言う行為に走り出す。
 傷つければ、その恨みがずっと、ずっと心の中に残り、自分を忘れないだろうと考えたから。

 だからあの時、恋華に傷を残した。
 愛してくれない自分の片割れに、妬み殺されそうなほど傷つけた。
「あたしが死んでも、忘れないよね……? そうよ、忘れるわけが無い……」
 冷静に自問自答をする魅栗だが、心情は妙な高ぶりが心を支配する。

そして今日も、彼女は“孤独”な日常を静かに過ごす。