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Re: 黒蝶は夜に輝く ( No.8 )
日時: 2011/07/26 17:57
名前: 華世 (ID: 9QYDPo7T)

♯2 穢れた羽を隠して



 好き、好き、大好き。
 この世で一番愛してる。


 部屋の扉に背を向けて物思いに耽っているその影は、黒田魅栗だ。
「恋華……あたしが嫌いなの?」
 今にも泣きそうで、消えそうなか細い声で静かに呟く。

 彼女、黒田魅栗は双子の妹である黒田恋華を愛している。
 誰よりも深く深く、真っ青な海よりも深く。
 血が繋がっていようと、女だろうと気にしない。
 只単に“恋華”という少女を愛していた。

 満月はすっぽりと雲に隠れてしまい、姿を消してしまった。
 例えれば、恋華が魅栗を避けるかのような————。

「だけど、あの人が負けてくれて本当によかったわ……」
 突然、不敵な笑みを浮かべながら、不気味な言葉を吐き出した魅栗。
「……だって、深く、深く愛せる人ができたのだから」
 過去の事でも思い出すかのように、夜空を見上げる。

 
 あの時の事は一日も忘れたことは無い。
 両親が事故で亡くなった日。
 偶然にも家に残っていた魅栗と兄は無事だったのだが、取り残された二人は“寂しさ”という感情に襲われる。
 16歳の少年と、12歳の少女だけで暮らすのはあまりにも寂しすぎた。
  
 そしてある日、魅栗はとんでもない事を口にした。

「妹が欲しいの。あたしにそっくりな妹が……」

 この一言で、とある少女の人生が狂ってしまう事になる。