ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 極彩色の紹巴—オリキャラ募集中?— ( No.35 )
- 日時: 2011/11/10 18:56
- 名前: 華京 ◆wh4261y8c6 (ID: yE.2POpv)
「お前達! よく私が留守の間頑張ってくれた! そのお礼を言ってはなんだが、今日は存分に飲め! 歌え! そして休め!」
「姐さぁぁあああん!!」
「姫ぇええええ!!」
四方鬱蒼とした森と小高い山に囲まれ、昼日中であっても漆黒の闇が視界を埋め尽くす、といわれる森、紫狐紅。
そこの木々全てを揺らしたのではないかと思われる程の大声が、妖殺しのつき姫こと工藤紅の屋敷から響いた。
——この屋敷こそが工藤紅伝説の出発点であり、現在紅が根城としている場所である。
この日、視察に出た紅率いる部下の妖達が怪我なく無事に屋敷へと帰って来た事に、留守を預かっていた部下達は狂喜乱舞した。
紅は喜びながら宴の用意をする部下達に微笑を浮かべたが、以前より僅かに活気が無い事に気がつき、眉を寄せた。
「お疲れ様でありんす、主様」
「ん……ああ、とのこか」
紅は近寄ってきた影に先ほどの表情とは一変して緩やかな微笑みを向けた。
それに応えるように影、とのこは肩で切りそろえられた金の髪をさらりと揺らして笑う。
「ところで、とのこ。少し活気が欠けているように思えるのだが……偵察にいった奴らが、帰ってきてないのか?」
とのこは紅の言葉に言葉を詰まらせ、愛らしい顔を曇らせた。そして言い辛そうに顔を伏せた。
「実は……」
と、その時。屋敷の大広間で皆が騒ぐ中、やけに通る伝令の声が響き渡った。
「伝令です! 屋敷に青龍王の騎士と思われる格好をしたものが近寄ってきている様子! 姫との面会を望んでいます!」
「……何?」
紅の眉間の皺が深くなり、紅を見ていたものは小さく悲鳴を漏らした。
自分達が傷付けられるかもしれないという事に対しての心配が紅をこのような顔にしているのだが、それにしたって怖いものは怖いのである。
とのこは紅の顔を見て大急ぎで懐から指でつまめる大きさの水晶玉を取り出した。
紅はそれをとのこから受け取ると、手をかざす。
水晶玉は漆黒に輝き先ほどの大きさから紅の掌の大きさにまで膨れた。
紅はそれを覗き込む、すると、黒いもやの中に黒鋼の西洋武具に身を包み、青い羽があしらわれた黒い帽子を被った男が確かにいた。
顔は帽子の陰になっており見えない。
だが、確実なのは、彼の黒鋼の武具は傷が付けられており、彼が命からがら逃げてきた様子だという事だ。
「紅様、どういたしましょう?」
紅は一瞬考え込むそぶりを見せたが、直ぐに前を向いて決断を下した。
「面会する。結界をたわませ、男のみをこの屋敷に招き入れろ……とのこ!」
「はっ!!」
「屋敷の庭の桜の木下へ、彼をもてなす用意を」
「了解致しました! お任せくださいな!」
とのこはにこりと微笑んで、桃色の浴衣を翻して自室へ向かった。紅はそれを見ると屋敷の入り口へと向かうべく歩を勧めた。