ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 半天使 ( No.5 )
日時: 2011/07/07 21:12
名前: 王翔 (ID: Un6CeTvg)

第三話

稀射が、慣れない手つきで俺の腕に包帯を巻いてくれている。

自分でも、気づかなかった小さな傷だ。

よく見ていたらしい。

なかなか、うまくできないらしく、何度もやり直している。

「もう大丈夫だ。適当でいい」

「……(フルフル)」

稀射は、ほっぺを膨らませながら首を左右に振る。

「……」

結構、真面目らしい。

よくできた小学生だ。

「そう言えば、学校は行かないのか?」

「……(コクコク)」

「なぜ…」

「……(フルフル)」

稀射は、泣きそうな顔で首を振る。

しまった。悪いことを……

理由は、大方想像がつく。

ようやく、うまく包帯を巻けたらしい。

「礼を言う……」

「……(コクコク)」

稀射は、にこっと笑った。

良い子なんだな、と思った。

「帰るか。そろそろ夕飯の時間だ」

「……(コクコク)」

なぜかは分からないが、稀射が言葉を発しないことに不自由は

感じなかった。

俺も、人と話すのが苦手だからだろうか。



教会に戻ると、クリオが出迎えてくれた。

「2人とも、おかえり。遅かったね」

「途中で、半悪魔と出くわしてな」

「そうなんだ。我雲に報告しとくよ」

「ああ、頼む」

「さ、稀射ちゃんもお腹すいたでしょ?帝雷とご飯食べておいで」

クリオは、にっこりと笑って稀射の頭を優しく撫でる。

「……(コクコク)」






夕飯を済ませ、部屋で本を読んでいた。

稀射も分厚い本に夢中になっていた。

「……」

小学生、だよな?

「……(コクコク)」

「?」

「……(フルフル)」

稀射は、本を読みながらリアクションをとっている。

感情移入ってやつか?

コンコン

ガチャ

ドアが開き、知り合いのリエが入って来た。

「何の用だ」

「新しい子が来たって聞いたから。その子が稀射ちゃん?」

「ああ」

稀射は、本を閉じて顔を上げた。

「私は、リエって言うの。よろしくね」

リエは、にっこりと愛想良く微笑んだ。

「……(コクコク)」

稀射は、頷く。