ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 作者・刹那から、読者様への挑戦状 ( No.12 )
- 日時: 2011/07/13 11:09
- 名前: 前城 刹那 ◆cSsNy1w6Kk (ID: iCAwesM8)
第九話 「ヒント=手紙 後編」
何もない真っ白の部屋・・・紅色の夕日がそれを染める・・・
眩しい。夢人はそう感じた。
踏んでいた封筒を手に持ち、その場でしゃがんだ。
佐奈は、ただその寂しそうな背中を眺めているだけだった。
夢人は、震えている手で、封筒の中を開いた。
嫌な予感がする・・・もうやめてくれ・・・夢人はそう思った。
中には、予想通り、四つ折りにされていた手紙が入っていた。
紙を四つ折りにするのは、佐奈の癖だった。
手紙を開いた。そこには、こんなことが書かれていた。
{兄貴へ
変なことに巻き込んでごめん・・・
たぶん兄貴は、何で私が記憶喪失になったかなんて、分からないよ ね・・・でもね、気になっていることがあったら、それをやった方が 良い。だって、物事には、必ず理由があるから。}
「必ずの理由・・・」
そういって、後ろを振り返った。佐奈と目が合う。
だが、佐奈は目をそらさない。
気になっていること・・・やはり、死の眼のことか。
ということには、やはり悠の死と、佐奈の記憶喪失には、死の眼が関係している・・・!?
「佐奈!」
いつもの調子で佐奈を呼んでしまった。佐奈は驚き、はい!?と大きな声をあげた。
「ちょっと、出かけてくるからさ・・・」
と、言いかけた。佐奈に留守番をさせようとしたが、さすがに記憶喪失の少女を一人にさせておくわけにはいかない・・・と夢人は思った。
「いや、一緒に行こう」
そう言って、夢人は、佐奈の手を握った。
佐奈の手は熱かった。普段の佐奈にこんなことをしたら、思いっきり殴られるであろう。
だが、ここにいるのは、佐奈であって、佐奈ではない・・・
「巻き込むんだったら、ちゃんと巻き込んでほしかった」
記憶喪失前の佐奈に、そう言いたかった。
「あ、あの・・・お兄さん?どこに行くのですか?」
何故か顔を赤めている佐奈が、夢人に対してそう言った。
「悠の家・・・って言っても分からないよね?」
もうすぐで、夜の7時になる。空は、薄暗くなっていた。