ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: Sick ( No.5 )
日時: 2011/07/12 20:48
名前: Neuron ◆kaIJiHXrg2 (ID: B1rykyOu)
参照: 遭うは表現で間違いではありません

そう、やっちまった。 この能力の発動のおかげで、俺は体から煙を噴出す。 そしてその煙が晴れると、そこに猫を助けた黒髪短髪の青年の姿は無く、代わりに踵まであるような地をすりそうな銀髪の、女が、猫を抱えて立っていた。
 そう、“副作用”だ。 紹介しましょう、俺の忌々しい副作用。
 力を使うと、女の子になる。 おかげさまで、女の子助けた事もあったけど、デートに誘うとか、そんな青春を謳歌するような事は出来た例が無い。
 周囲の視線が、とても痛い。 それもそのはず、服装の変化は当然無い。
 男物のだぼだぼの服を着た女が、今しがた青年の助けた猫を抱えているとあれば不自然極まりない。
 どこから沸いたのか、と考えれば直ぐに、その女がさっきの青年だったという結果にたどり着くことだろう。
 あの青年が、女になったと。
 「うえ、早すぎるだろ……。 副作用」
 その呟きと同時、ピピピと笛の音が耳に入る。 能力者の能力の発動は、特定の状況下で無ければ認められていない。
 つまりは、それを目撃した警察官が俺を捕らえに来た、と言うわけだ。
 直ぐ近くにパトカーを停車し、
 「街中での能能力の発動が、違法であると知っていますか、お嬢さん」
 お嬢さんじゃ、ねえ。 それに、能力の発動見ていたんだったら俺が男だってことも知っているはずだ。 それを知っていての嫌がらせか?
 つーか、毎度毎度俺の事捕まえてくれる警察官だし。 何だっけな、名前。
 「えーと、どちら様でしたっけ?」
 「酷いですね、これで二十回は注意したはずですが?」
 ああ、そうだ。 この伊達めがねの警察官。 名前が確か、樋宮 香登(ひのみや かがと)。
 この男、見れば見るほど、警察官とはかけ離れた姿で。 ピアスは通常装備。 ペンダントやブレスレットも遭うたびに増えていっている。 最近は、どうやら指輪に手を出し始めたのか、指の関節までびっしりと指輪が覆っていた。
 何で、こんな奴が警察の試験に合格したのやら。 この世の七不思議の八つ目の不思議として登録してもらいたいくらいだ。
 「一々数えてられるお前がスゲエよ。 俺はお前の名前覚えてないっての」
 本音爆発。 彼はショックを受けたような表情で、しっかりと俺の手に手錠をかける。 やる事はやるんだよな、このチャラ男。
 仕事熱心なのはいいけど、能力使用を違反した覚えは無い。
 「手錠するの待てよ。 能力は確かに使ったけど、使用制限には引っかかってないだろ。 ほら、猫助けたし」
 腕に抱きかかえた猫を見せるが、彼は無言でパトカーに俺を押し込んだ。
 チョット待てよ、話聞けって。 
 「一応、ムショ送りにはしねーから。 使用時の状況は警察としても把握しとかにゃならんのよ」