ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 永久の刹那 ( No.1 )
日時: 2011/07/13 12:12
名前: Neuron ◆kaIJiHXrg2 (ID: B1rykyOu)

 退屈だ。 それだけであればまだいい。
 孤独だ。 それだけであればまだいい。
 不老だ。 それだけであればまだいい。
 不死だ。 ……最悪だ、今まで挙げた事柄全てを引き寄せる。

 不死鳥は、家族が居ない。 結婚しようと、相手はすぐ老いて死ぬ。
 不死鳥からすれば、永久の中の刹那。 同じだけ、寿命を持った存在など神くらいだ。
 最悪だ。 神は不死鳥を鳥かごに閉じ込める。
 神の命令という名の呪縛の下に不死鳥は監禁される。 だが実際、畏れている。

 彼女の体を軸に、無数の書物が衛星の如く飛び回る。
 彼女の死んだような瞳に映るのは、何十種、数千の文字列。 死んだようなその瞳で、書物を読み漁る。
 言葉を忘れたように、彼女は一言たりとも言葉を発する様子が無く、ただただ自分の周りを回る書物を次々と読み続ける。
 読んだものは棚に戻され、棚ひとつを数秒で読み終わり、別の棚へ。
 彼女の世界は、見渡す限り、地平線の彼方まで本棚が列を作っている。 真っ白い世界。
 そこに居るのは、彼女一人。 と、もう一人。

 「久しぶりだな、フェネクス。 助けに……来てやった」

 紫がかった黒髪の男が……その真紅の瞳を見開いて彼女に歩み寄る。
 彼は天使か、はたまた悪魔か、死神か……。