ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 永久の刹那 ( No.2 )
- 日時: 2011/07/15 23:07
- 名前: Neuron ◆kaIJiHXrg2 (ID: B1rykyOu)
……きろ。 ……おきろ……。
「起きろ! レム!」
黒板に向かっているめがね親父の放つチョークが、机に突っ伏して寝ている少女の脳天にぶち当たる。
彼女は痛そうに被弾した箇所をさすりながら欠伸と共に顔を起こす。
「……なんですか、センセー……。 テストはいつも点取ってるじゃないですか。 何か問題でも」
授業態度最悪。 教師からしてみれば嫌な生徒ナンバーワン。
第一魔術学園『バエル』の特待生、レムと呼ばれる名無し少女はいつもの如く面倒くさそうに教師の顔を注視する。
その視線は徐々に上に上がり、
「センセ、カツラずれてますよ」
その一言にたどり着く。
明らかにその口調は、皮肉交じりの嫌がらせ。 興味も無い相手と話す価値は無いといわんばかりに、彼女は窓から外を眺める。 雲ひとつ無い、快晴。
彼女には、両親が居ない。 物心ついたとき、既に一人きりだった。
記憶が飛んだのか、それとも覚えていないだけなのか。 何歳のときに物心がついたのか、そんな事も完全に覚えていない。
ただ、一言。
『死の足音が聞こえる。 私はもう直ぐ、死ねるのかな?』
その一言だけ、覚えている。
誰の言葉なのか、ただの夢なのか。 いつ聞いたものなのかも一切覚えていない。 今のところ有力な説は夢の中。
嫌によく覚えている。
「おのれ……貴様ァ……!」
彼女の一言に、血管を引く突かせながら教師が切れる。 だが、彼女の前には教師、生徒の関係など一切関係ない。 何故なら、彼女の方が明らかに知恵を持ち、数多の上級魔術を欠伸をしながら操る。
いわゆる、天才児という人種だったからだ。 そして、その魔術も、一体いつどこで学んだものなのか、それすらハッキリせず、彼女自身、使いたがらないという節もある。
レムにめがね親父が飛びかかろうとしたとき、教室の戸がノックされる。
「……校長!」
めがね親父が、慌てたように黒板に向かう。
底に立っていたのは、黒髪の青年。 なんと、この姿でこの学校の校長だ。
噂によれば、外見は十代だが、実際の年齢は二十代らしい。 が、実際そんな事に興味はわかない。
それよりも、クラスメートの目を引いたのは、その横。 地面を擦りそうな、金髪の、可愛らしい少女。
仏頂面で、校長の横に立っていた彼女は、黒板の文字を指の一振りで消し去ると、チョークを握り、名前を書き始める。
“アリソン・F・セイファート”
名前から見て恐らくは、スペイン人。 だが、このご時世にそんな人種など一切関係なかった。
「今日からこの学校に通う事になった。 アリソンだ、気安く話しかけてくれるなよ」
第一印象、仏頂面。 一言目、喧嘩口調。
彼女に対するクラスメートのイメージは、この上なく悪いものだった
そして、彼女の発言はとどまることを知らず、今度はその長い髪の毛の束をあさると、中から羽の生えたモルモットにも見えなくはない長い尻尾の紅龍を手に取ると、
「それと、こっちは龍のミゲル。 私以外には絶対に懐く事はない、そこでカバンを漁って煮干を取り出した女。 そっちで魚肉ソーセージを剥いてる男。 無駄な事はするな、ミゲルは魚介類が嫌いなんだ。 魚与えた日には、手がつけられなくなるほど暴れるからな。 素人考えで龍と仲良くなろうと奇妙な事はするなよ。 以上だ、席はどこに座ればいい?」