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Re: welcome to heven 天国へようこそ ( No.10 )
日時: 2011/08/23 09:05
名前: 王翔 (ID: hA/oaOn8)

第九章



 空を巨大な闇が包み込み月の美しさが映える……夜だった。
 俺は、リビングのソファに腰掛けお茶をすすっていた。
そろそろ寝ようかな。
そう思った時だ。

「瀬座」
 
 ラファンが朗らかな笑顔でテーブルをきれいにふきんで拭きながら声を掛けてきた。

「何だよ」
「ねえ、僕と前に会ったことある気がしない?」
 
 その言葉に、俺はお茶をテーブルに置いて首を傾げた。

「いや、ないけど。どうしたんだ?」
「本当に?」
 
 ラファンは確かめるように質問してくる。
 だが、答えは変わらない。知らないんだから、仕方ない。

「そっか。覚えてないんだ」
「え……」
 
 ラファンの目に、暗い影が差した。

「……思い出してくれたって、いいじゃないか。どうして、覚えてないのかな」
「え、いや……」
 
 何と言うか、大した言葉ではないはずなのにぞくりとした。
 冷や汗が流れる。
 何だ?この感じは……。

「ね、本当に何も知らないの?」
「……っ」
 
 何だ?
 ただ、質問されているだけなのに、怖いと感じてしまう。

「ね、瀬座」
「ほんとに……知らないんだ」
「ひどいなぁ」
 
 ラファンは、苦笑いする。
 ふと、目つきが鋭くなった。

「!」
「どうして、かな……僕は、こんなに君のこと想っているのに」
「は……?」
 
 不意に肩を掴まれ、キスをされた。

「……っ!」
 
 自分でも、顔が真っ赤になっていくのが分かる。
 どう言うことだ? これは……。
 突き放せばいいだけの話だった。
 けど、それができなかった。

「瀬座、僕だけを見てよ」
「…………」
 
 何も答えられなかった。
 頭が真っ白で、思考が追いつかない……。

「…………」
「そのために──あそこまでやったんだから」
 
 ラファンが何か言っていたが、頭に入ってこなかった。
 ボンヤリと意識が遠のいていく。