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Re: welcome to heven 天国へようこそ ( No.14 )
日時: 2011/08/23 09:07
名前: 王翔 (ID: hA/oaOn8)

第十章


 
 透き通るようなきれいな青空だったが、太陽はジリジリと地面が焦げてしまうのではないかと思うほど強く照り付けていた。
 俺は身体が焼けるように暑いなか、今日こそはちゃんと手紙を届けようと緑濃い草原を歩いていた。
 大きめのバッグを抱えているので身体が重い。
 それにしても、今朝のラファンは何事もなかったかのようにいつも通りだった。
 思わず嘆息。
 俺は何が何だか分からなくて困ってるって言うのにどういうことなんだ。
 そんなことを考えながら歩いているとようやく草原の中心に目当ての家が見えた。
 プリンだった。完全に外観がプリン。巨大なプリンにドアと窓をつけただけに見える家だ。
 変な家を見るのも慣れているから特に気にせずドアをノックした。
 すぐにドアが開け放たれ、ふんわりとした茶髪を肩あたりまで伸ばし、青色の服を着た可愛らしい女の子が姿を現す。

「こんにちは。あ、君が瀬座ちゃん?」
「ああ……えーと、手紙を」
 
 俺は大きなカバンのなかをゴソゴソと漁り、目当ての手紙を取り出すと女の子に手渡した。
 女の子はにこりと太陽のような可愛らしい笑顔を浮かべる。

「ありがとう。せっかくだから上がって行く? 今日は暑いから少し休んでいって」
「あ、ああ」
 
 俺は一瞬、戸惑ったがありがたく好意を受け取っておくことにする。
 


         ★



 上がらせてもらうとフルーツの形をした家具が並んでいて驚いた。
 イチゴ型の椅子やオレンジを半分に切ったようなテーブル……こんな家具は初めてみた。

「私はルナって言うの。よろしくね」
 
 ルナは手際よくコップにお茶を注ぎながら自己紹介をする。

「ルナ、か……」
 
 モテそうだな……この子。

「瀬座はまだここに来たばかりなんでしょ? 私も最初は戸惑っちゃった。だって、急に死んだなんて信じられなかったから。でも、ここでも仲良くしてくれる人がたくさんいて明るくいられるようになったの」
「へぇ……」
 
 俺は相槌をうちながらルナの淹れてくれたお茶をすすった。

「ねえ、瀬座はどうして死んじゃったの?」
 
 レナが心配そうな表情で質問してきて俺は思わずお茶を飲むのをやめ、黙りこんだ。

「あ、言わなくてもいいよ。嫌な死に方をしたなら言いたくないだろうし……私もそうだから」
 
 その時のルナの悲しそうな表情が目に焼きついてしばらく離れなかった。