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- Re: welcome to heven 天国へようこそ ( No.2 )
- 日時: 2011/08/23 07:57
- 名前: 王翔 (ID: EMu3eY/n)
第二章
「ようこそ、天国へ」
「は……?」
俺はどう反応して良いのか分からず、ただ固まるしかなかった。今コイツ天国って言ったよな?
「ねえ、瀬座」
名乗ってもいないのに俺の名前を知っているらしく、初対面だというのに勝手に呼び捨てにされる始末。
もう何がなんだか……。
とりあえず深呼吸をして精神を落ち着かせ、次に放たれるであろうまた度肝を抜かれそうな言葉に備えた。
「君は、死んだんだよ。だから……ここに来た」
「……」
顔色一つ変えることなく、淡々と告げられたソイツの言葉で心臓がドクンと高鳴るような感覚を覚えた。
死んだ────。
確かに剣で胸を貫かれたら死んでもおかしくはない。いや、おかしくないどころか生存率に方がはるかに低いだろう。認めるしかないか。
死んだ人間は天国に行くと聞いたことがある。
それが、ここらしい。
「何だ、そうなんだ……」
「あれ? 驚かないんだ? 大体の人はパニックになるんだけどね」
ソイツは不思議そうに首を捻り、俺の姿を見据える。珍しい生物を観察するような目……に見える、多分……俺はあくまで淡々と口を開く。
「こんな不思議な所が、俺の今までいた世界だって言うほうがおかしいだろ」
「うん、そうだね。物分かりが良くて助かるよ」
「ところで、アンタは……」
コイツも、俺と同じ死者なのか? それとも、天国の案内人か何かだろうか……。
「僕も、君と同じ死者だよ。名前はラファン」
「へぇ……」
「さて、案内してあげるよ、お嬢さん?」
「な、何だよ……何で俺が女だって……」
大抵の奴は、この外見や性格、話し口調のせいか俺のことを男だと思うのに。
「んー……男にしては、可愛すぎるよ」
「…………」
特に言い返す言葉が思いつかず、立ち上がるとラファンの後に続いた。
太陽の明るい光に照らされながら、恐らく森の出口をへと続いてるであろう道を歩いた。
木々がうっそうと生い茂るなか、背の高い邪魔な草を掻き分け、歩く道を確保しながらラファンの後を追う。
「なぁ……具体的に何するんだ?」
なんとなく沈黙状態には耐え切れず、ラファンに問いかけた。仮に沈黙状態に耐えられても聞いておくべきことだろう。
何をやればいいのか分からないままいては、困るだけだ。
「なにをしてもいいんだよ。一日中寝ようが働こうが……何にも困らないから…あ、でも、一つだけ気をつけてね」
「なにを?」
「死喰人に食べられないようにね。死喰人は自殺した人や殺された人の魂を好むからね」
「何だ……天国って、そんなもんなのかよ……」
天国は恐怖の対象になるものなんて何もない、楽しいだけの楽園ではないんだな。
つまり、天国=楽園ではないと。
「うん、生者は天国と楽園は同じものだと思ってる人が多いみたいだけどね。まあ、仕方のないことだよ」
ラファンはべつに必要なさそうな手振り身振りをしながら苦笑混じりに言う。
「あと、ここで死喰人に喰われたら次はないからね」
ここで死んだら、その先はないらしい。
俺は死んだ……改めてそれを心で確認すると、やはり疑問が生まれてしまう。
俺を殺したのは誰なんだ?