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Re: welcome to heaven 天国へようこそ【更新! ( No.25 )
日時: 2011/08/22 20:23
名前: 王翔 (ID: 3f2BBQD7)
参照: http://www.kaki-kaki.com/bbs_l/view.html?62149

第十三章




 月がぽっかりと浮かぶ夜空の下、俺は暗闇のなかを行き先も決めずやみくもに歩き続けた。
 何をどうすればいいのか分からなくてただただ歩く。
 気づけば、木々がうっそうと生い茂り、真っ暗で不気味な雰囲気をかもし出す森のなかだった。
 周囲の木々の幹は一瞬、不気味な顔が浮かんでるように思えるほど歪な形をしていた。
 ほんの少し恐怖を覚えた俺は、できるだけ木々を見ないように前だけを見て進んだ。

「こんな時間にどうしましたか?」
 
 不意に背後から声が聞こえ、振り向くとレンが立っていた。
 ああ、森のなかはコイツの縄張りだったな。

「べつに何も……」
 
 レンは特に感情もこもっていなさそうな作り笑いを浮かべる。

「あなたの殺した犯人が分かってしまったんでしょう?」
 
 何も言えなかった。
 何を言えばいいのか分からなくて黙り込んだまま立ち尽くす。
 夜風が葉を揺らす音だけが聞こえる。

「どうですか? 僕のところに来ませんか? 面倒ならちゃんと見てあげますよ」
「いや、それはちょっと……もう行くから、ついて来るなよ」
 
 コイツには頼りたくない。きっとロクなことがないだろう。
 俺は踵を返し、足早に歩き始める。

「こんな時間に出歩いて、死喰い人に食べられてしまって消えても責任取れませんよ?」
 
 レンの言葉に耳を貸さずに歩いた。





            ★



 月の光をほのかに浴びて淡く輝く丘の上に来て、座り込んだ。
 これから、どうする?

「俺は……」
 
 考え込んでいた時だった。
 背後から、衝撃が走る。何かが刺さったような感覚。

「……!」
 
 身体の痛みを堪えつつ振り向くと死喰い人の姿があった。
 でも、それを確認したところでどうにもならず、俺は倒れ込んだ。
 自分の手を見ると、透けていた。
 消える───のか?
 どんどん薄くなってくる。
 身体の奥から恐怖が這い上がってくる気がした。
 こんなことなら……飛び出して来なかったらよかった……。

「と、止まれ……止まれよ!」
 
 そう叫んで見ても、どんどん薄くなるばかりで止まる気配は全くなかった。

「ああ、良かった。間に合って」
「ラファン……?」
 
 いつの間にか俺の隣にいたラファンは、にこりと微笑んだ。

「一つだけ、消えるのを回避する方法があるんだよ」
 
 どうやってと聞き返そうと口を開きかけた瞬間、キスをされた。