ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: welcome to heaven 天国へようこそ【更新! ( No.30 )
- 日時: 2011/08/23 09:15
- 名前: 王翔 (ID: hA/oaOn8)
最終章 (瀬座編)
「!?」
いきなりキスをされた俺は目を白黒させた。
何で、あんな状況からこうなるのか全く理解できない。
ようやくラファンが離れると俺は、自分が消えかけていたことを思い出し、慌てて手を確認した。
しかし、もう透けてはいなかった。
はっきりと存在している。さっきの現象が嘘だったかのように何も異常はない。
一体、どうなってるんだ? 確かに、さっきの現象は幻じゃなかったはずだ。
俺は、おずおずとラファンに尋ねる。
「ラファン、一体……どうなってるんだ?」
「さっきみたいに消えかけたら、普通は助からない。けどね、誰かが魂を支えてる器って言うのかな……それを分けてくれたら、消えかけてしまった魂の器とは別に、分けてもらった器が魂を支えてくれてね助かるんだ。ああ、でもこれは相当の力を持ってないとできないし、分けた方は器がすり減っちゃうから一度が限界だね」
「よく分からないけど……」
助けてくれたってことだよな?
うん、そうだよな。
気づけば死喰い人の姿はなかった。逃げたのか?
「瀬座、帰ろうか? まだ僕のこと許せない?」
心配そうなラファンに対し、俺は口を開いた。
「いや、もう過ぎたことだしどうしようもないから……許すよ。でも、何で俺を殺したのか、詳しく教えてほしい」
「そうだね」
ラファンは穏やかな表情で頷き、俺の隣に座る。
「僕は、生きてる頃に君にあったことがあるんだよ。その時から好きだったんだけど、僕はすぐに死んじゃって……ここで君を待とうとは思ってた。でも、君が死ぬのは何年後になるか分からないし……何より、君が大人になって生きてる内に結婚とかしてそれから死んだら、天国に来ても僕のことを見てくれないんじゃないかって不安だった」
「それは……」
「生前に好きになった相手がいたら、ずっとその相手を待ち続けるかもしれないから……」
「それで俺を殺したって?」
「うん。悪気はなかったんだよ?」
ラファンは苦笑いし、肩をすくめる。
そう言うことだったのか……俺は全然覚えてないんだけど、会ったことあったのか。
「そう言えば、ラファンは何で死んだんだ?」
「うーん、秘密。その話はまた今度ね」
「むか……」
俺は、ちょっと不満だったけどそれ以上は聞かないことにした。
もしかしたら、嫌な死に方をしたのかもしれないし、いつか自分から話してくれるのかもしれないから。
それにしても……こんな理由でも、殺されたことを許せてしまうって俺もどうなんだ?
好き、なのか?
「うーん……そんなわけは、ないよなぁ」
★
朝、部屋に窓から柔らかな陽光が差し込んでいた。
俺はいつも通りに起きて、今日こそはちゃんと手紙を届けられるようにと支度をしていた。
リビングに行くと、ラファンがテーブルにパンと卵焼きを並べていた。
俺に気づくとラファンは、朗らかに微笑み、
「おはよう、瀬座」
「あ、うん、おはよう……」
「今日も手紙の配達、してくれるの?」
「ああ、やっぱり楽しそうだし」
「今日も届けるものあったかな」
ラファンは、テーブルの上に置いてある一通の手紙を手に取り、裏返すと宛先を確認する。
なぜか不機嫌そうな顔になり、
「これは……レン宛てだね。捨てようか」
「いやいや、待てって。勝手に捨てたらダメだろ! 俺が届けるからこっちに貸せって」
「うーん……手紙を家に放り込んだら、全速力で逃げるんだよ?」
「分かってる」
何か、すごい命がけの配達だな……レンレンになってれば嬉しいんだけど、レンレンになる頻度が低い気がする……。
俺は、ラファンから手紙を受け取ると大きなバッグに詰め込んだ。