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- Re: welcometo heaven 天国へようこそ:瀬座編完結 ( No.32 )
- 日時: 2011/08/23 09:20
- 名前: 王翔 (ID: hA/oaOn8)
第一章 レン&レンレン編
空は、透き通った蒼色で白い雲がゆったりと流れていて嫌なことを忘れさせてくれるような気がした。
恐る恐るレンの家の前まで来て、俺は深呼吸した。
「よし」
早足で、ドアを開け、バッグからレン宛ての手紙を玄関に置いて立ち去ろうとした時、足音が聞こえた。
まさかと思いながら振り向くとレンの姿があった。
レンはにこやかに告げる。
「おや? 瀬座じゃないですか。私に何か御用でしょうか?」
「いや、手紙を届けに来ただけで……そこに」
「ありがとうございます」
「早く読めよ。じゃあ、俺はこれで──」
全力ダッシュで立ち去ろうとした瞬間、腕を掴まれ見事にバランスを崩し転倒。
俺は急いで立ち上がり、レンを睨み付けた。
「何するんだよ?」
「いえ、せっかくですから上がって行きませんか?」
「いや、忙しいから……」
「少しぐらいなら大丈夫でしょう。それとも、怯えているんですか?」
笑顔で告げるレンに対し、俺はむっとして了解してしまった。
「怯えてない。上がればいいんだろ上がれば!」
「はい」
結局、上がることになった俺はレンを警戒しつつリビングのふわふわしたソファに腰掛けて、用意されたお茶をすすった。
レンは向かい側のソファに腰掛け、こっちを見てにこりと微笑んでいる。
正直、その作り笑いじみた表情が気に食わなかった。
しばらく会話もなく向かい合うだけで、外から吹く緩やかな風の音が耳に入るだけだった。
今思えば、コイツと話すことはないんだな。
共通の話題は一向に見当たらなくて、俺は内心困り果てていた。
何を話せばいいのか……。
そう思っていると、ふと一つの疑問が頭に浮かんだ。
「なあ、お前は……死者なのか? それとも……小人と一体化してるぐらいだから、元々ここの住民なのか?」
一瞬だが、レンが目を伏せた。
しかし、すぐに笑顔を作り感情を読み取ることのできない声音で答える。
「私は死者ですよ」
「そうなのか? じゃあ、レンレンは?」
「実は……小人も生きたり死んだりするんですよ」
「え?」
俺は思わず目を丸くして首を捻った。
特に俺の様子を気にした風もなくレンは淡々と語る。
「私は、生前……死ぬ一週間ぐらい前でしょうか……レンレンの会いましてね」
「そうなのか?」
「同じ時間、同じ場所で息を引き取った魂は天国へ来ると一体化してしまい、片方ずつしか表に出られないという現象が起こってしまうんですよ」
「な、なるほど……」
「まあ、これはごく稀なんですが、運悪くこうなってしまったということです」
さっきまで作り笑いをしていたレンが苦笑いをする。
レンとレンレンは一緒に死んだのか……。
でも、何で死んだんだ?
「なあ、何で死んだんだ?」
「ここからは、プライバシーなので代償をもらいますが」
「い、いや……それなら、いい……もう帰るよ」
俺は、お茶を一気に飲み干すと早々にレンの家を出た。