ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: welcometo heaven 天国へようこそ【参照200 ( No.37 )
- 日時: 2011/08/27 14:21
- 名前: 王翔 (ID: DOg8Z0f3)
- 参照: http://loda.jp/kakiko/?id
第三章
「…………」
俺は、部屋の窓越しに透き通った雲がゆったりと流れる青空を眺めていた。
それにしても、レンって元からああなのか?
生きてる頃から? それとも死んでからなのか?
もし、死んでからなら何かとんでもない死に方をしたのか、気になって仕方がない。
うーん……どうしようかな。
ラファンに聞いても教えてくれなさそうだしな。
とりあえず、部屋を出て玄関へと向かう。
レンに直接聞くのは、まずいよな。
代償がどうとかって言い出すわけだし……だから、アレだ。
こそこそと探ってみるのがいいな。
いや、人の死因を詮索するのはあんまり良くはないんだろうけど、何でああいう奴なのか気になるわけだし、まあ、バレなければいいはずだ。
そう考え、レンの家に向かってみることにした。
レンの知り合いとかいれば、何か聞けるかもしれないんだけど、レンが他の誰かと話してるとことか見たことないし誰が知り合いだか分かんないからな……。
★
薄暗く、鬱陶しいほど木々や草が生い茂り、ゴツゴツした石なんかが転がる足場の悪い森のなかを背の高い邪魔な草を掻き分けつつ進んだ。
ほんの少し、違和感を覚えて足をぴたりと止めた。
「この森、こんなに歩きづらかったか……?」
この前は、ちゃんと道があってこんな風に邪魔な草を掻き分ける必要もなかったはずなんだ。
おかしい……もしかして、途中から道を外れたのかもしれない。
正直、天国の森は下界のものより複雑に入り組んでいて、数回来ただけじゃ全く構造が把握できない。
困ったな……このままだと遭難って事態に……ん? 森で迷子になるって遭難って言うのか?
とにかく、早く道に戻らないと。
内心焦り始めていた時、足音らしきものが聞こえた。
誰かいるのか? いるなら、頼るに越したことはない。
相手が行ってしまわないようにと願いながら、急いで足音の聞こえる方へと走った。
足音がかなり近くなったと思うと、まぶゆい紫色の閃光が宙を駆け抜けた。
ガラスが割れるような破壊音が盛大に響き渡り、黒い物体──死喰い人が粉々に砕け散り、粒子の如く宙に溶けるようにして消え去った。
死喰い人を倒したらしい相手を確認しようと前へ出ようとすると、目の前に死喰い人が舞い降りた。
「……!」
懐から短剣を取り出し、青色の軌跡を引きながら死喰い人を一刀両断した。
死喰い人は、あっけなく砕け散り、消えていった。
邪魔するものがなくなり、相手がいる方へと目を凝らした。
双剣を鞘に戻し、こちらに向かってにこりと微笑むレンの姿があった。
「こんにちは、瀬座じゃないですか。どうしたんですか?」
「うん……ちょっと迷子に……」
「そうなんですか。案内しますよ」
「あ、ああ。頼む……」
「では、行きましょうか?」
俺は深く頷くと、レンの後を歩いた。
レンの背中を眺めながら、思考を巡らせる。
本当に、何で死んだんだろう……病気か、事故か、自殺か、殺されたのか……死因なんていくらでもあるから簡単に目星をつけることはできない。今のコイツを見てる限りでは、女の人に恨まれてて殺されたって可能性も十分にあり得るかもしれない。
……まあ、死ぬ以前からこういう奴だったかどうかは分からないし……そう言えば、レンレンと同時に息を引き取ったって言ってたよな? なら、その線は薄いかもしれない……全く見当がつかない。
コイツ、本気で好きになったって相手はいたのか?
「レン」
「何ですか?」
「お前って……生前好きだった相手はいるのか?」
そう質問した途端、レンの表情が曇った。
失言だったみたいだ。様子から察するに相当のことがあったのか?
しばらく静寂が続き、さわさわと草や葉がそよ風に揺らされる邪魔にならない程度の音が聞こえるだけだった。
俺は、どうするべきか考えたが結局黙り込んだままで立ち尽くしていた。
そんな俺の様子を見てレンは、普段通りの笑顔を浮かべる。
「私が、一人の女性を真剣に愛せると思いますか?」
正直なところ、答えはNOだった。
けど、本当にそうなのかは確信は持てていないし……今の生前好きだった相手はいるのかと質問した時の様子がはっきりと答えを決められないようにしていた。
「どうだろ……俺には、分からない……」
「そうですか」
★
家に帰ると玄関でラファンが不機嫌そうに腕を組んで待ち伏せしていた。
何か、嫌な予感がする。
おずおずと様子を伺っているとラファンはにこっと微笑み、口を開く。
「今日、レンに会ったよね?」
「いや、会ってないけど」
「どうして嘘つくの?」
「…………」
「会ったらダメって言ったのに……そんなにレンが何で死んだのか知りたい?」
「う、うん」
俺が頷くと、ラファンは壁にもたれかかり、さして興味もなさそうな感情の篭ってない声音で告げる。
「レンは──心中したんだよ」