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Re: welcome to heven 天国へようこそ ( No.4 )
日時: 2011/08/23 08:02
名前: 王翔 (ID: EMu3eY/n)

第四章


 いまだふわふわのソファでクッキーをかじりながら、俺はラファンに尋ねた。

「なあ、死喰人って出たらどうするんだ?」
「ああ、倒せばいいんだよ。誰でも低級の死喰人を倒すぐらいは訓練すればできるよ」
「じゃあ、俺も……」
 
 その訓練とやらをして……と続けようとしたところで、

「危ないからしなくていいよ。もし出たら僕が守ってあげるから」
「……俺を下手に女扱いするなよ。自分の身ぐらい、自分で守る」
「……」
 
 うわ、沈黙しやがった。さらにショックを受けて何かを飼い主に訴えかけるような眼差しだ。
 これだと、俺が悪いみたいじゃないか。

「うん、君がそう言うなら。これを」
 
 意外にもラファンはにこりと優しい笑顔で俺にある物を差し出した。
 手渡されたのは刀身の青い短剣だった。

「低級の奴なら、それで斬るだけで倒せるから」
「ああ……うん」
 
 コイツは、低級の奴は……と強調している。もし上級の奴とかが現れたら逃げろってことだろう。
 今まで食材以外のものは斬ったことがないが、大丈夫だろうか。
 まあ、その時になれば意外と何とかなるかもしれない。


 自室に行った俺は、ピンク色のハート型のベッドに腰掛けた。

「それにしても……何をしたら…」
 
 何をしてもいいとは言われたが実際、言われたら困る言葉だ。
 思わず嘆息。
 俺には明確なやりたいことがない。
 まあ、これから考えても遅くはないだろう。
 そう思い、ベッドに寝転がろうと体勢を崩しかけた。
 コンコンとガラスが軽く叩かれる音を聞き取り、俺はハート型の窓を確認した。
 ツインテールの小人が窓越しにふわふわ浮いていた。
 口がパクパクしているので、何か喋っているようだが窓が防音仕様なのか小人の声が小さいのか、声は聞こえない。
 窓を開けるとその小人はふわふわと浮いた状態で侵入してきた。

「はじめまして、ですよ!」
 
 ぱあっと明るい表情で大きな声でそう言ってきた。 それなりのボリュームなので、どうやら窓が防音仕様だったようだ。

「あー…はじめまして」
「ボクは半小人のレンレンですよ! よろしくです、せーちゃん!」
「な、何で俺の名前を」
 
 せーちゃんについては、突っ込まない。聞いたところで、どうせニックネームとか言うんだろう。

「ボクは、よく下界を見ていたので大体の人のことを知ってるですよ!」
「下界を?」
「天国から、下界を見ることができるですよ! ボクとレンはよく見てたです」
「レン?」
「レンはボクの中にいるもう一つの魂ですよ。結構、 入れ替わるですよ、姿ごと。レンの魂が表に出ると、普通の人間サイズなんで半小人ですよ! レンはいけめーんさんなんですよー!」
「へ、へえ……」
 
 イマイチ良くは分からないけど、納得しておく。

「ボクの家は下界にあるです。下界のことが知りたくなったら、来るといいですよ」
「何を教えてくれるんだよ?」
「えーと……誰が誰に殺され……」
 
 ガチャリと音が響き、不意にドアが開いた。
 料理中だったのか包丁を持った不機嫌そうなラファンがいた。