ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: welcometo heaven 天国へようこそ【表紙絵 ( No.43 )
- 日時: 2011/08/25 07:36
- 名前: 王翔 (ID: dP9cSz6y)
第四章
「レンは──心中したんだよ」
ラファンは、感情の篭っていない声音ではっきりと告げた。
俺は、正直信じられないと思いながら当たり前のことをラファンに尋ねた。
「心中っていうと……」
「簡単に言えば、愛し合った男女が一緒に自殺するってことだね」
「…………」
思わず口を噤んだ。
信じられない、としか言いようがない。
あのレンに、一緒に心中するほど愛した相手がいたなんて……。
「相手は……」
「それに関しては、詳しくは言えないよ。うっかり口走ろうものなら代償とか要求されかねないからね。まあ、生前結ばれることができなくて死ねば結ばれることができるかもしれないかと思ったんだろうけど……」
「けど?」
「死んでもダメだったんだよ、あの二人は。それどころか、触れ合うことすらできなくなったんだから。うん、何て言うか──生前より悲惨な状況だよね」
触れ合うこともできないって、一体どういうことなんだ?
直接、会ったりとかできないのか? 何でそんなことが……。
なら、レンは女の人が好きなのは、埋め合わせなのか?
ラファンは、にこりと微笑む。
「これでいいよね。もうレンが何で死んだのか分かったんだし、もうわざわざレンに会いに行く理由もないよね」
「あ、ああ……」
本当のことを言うと、もう少し詳しく知りたかったけど、それを直接ラファンに言ったところで、多分……いや、確実に機嫌を損ねることになるだろうし、とりあえずと頷いた。
「ああ、良かった。もう、手紙を届ける時意外はレンのところに行かないでね? あと、長居はしないように」
「分かった……」
実際のところは、分かってなんかいないけど。
家に上がると俺は、リビングのソファに腰掛け、テーブルの上に置いてあるクッキーを一つ手に取ると口に含んだ。
それにしても、俺は人の死んだ理由を知って何をしたいんだろう……。
正直なところ、全く分からない。そして、時折思う。
こんなんで、そんなことを知ってもいいのか?
「どうしたの、瀬座? 何だか浮かない顔でけど……」
気付けば、いつの間にか目の前にいたラファンが心配そうな表情で聞いてくる。
俺は、はっとして笑顔を取り繕うとできる限り明るく答えてみせた。
「大丈夫だって。何もないからさ」
「そうかな? 正直、僕にはそう見えないけど」
「…………」
ラファンは、優しい表情で俺の頭を撫でる。
「何かあったら、ちゃんと僕に相談してほしいな。女の子は、男の子に頼ってもいいんだよ? 僕は、もっと君に頼ってほしい」
頭を撫でてくるラファンの手をぱっと掴んで降ろした。
なぜかと言うと、何だか子供扱いされたみたいでむっとしたからだ。
これぐらいで、むっとするぐらいだから、案外俺も子供なのかもしれないけど……。
「俺は、子供じゃないんだからな」
「そうなんだ。うん、子供だなんて思ってないよ」
ラファンは、苦笑いして肩を竦めると向かい側のソファに腰掛ける。
「まあ、僕に手伝ってほしいことがあったらいつでも言ってよ。君が言うなら何だってやってみせるよ」
何でも、と言われても、いざ考えてみると思いつかない。
まあ、今すぐ何か手伝わせろと言ってるわけでもないし、とりあえず保留で。