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Re: welcome to heven 天国へようこそ ( No.7 )
日時: 2011/08/23 08:26
名前: 王翔 (ID: EMu3eY/n)

第七章


「レンレンの中から、見ていましたから」
「え……?」
「私は、レンです」
「レン……」
 
 レンレンの言ってたもう一つの魂とやらか。
 じゃあ、今は入れ替わってるのか?

「ちょうど良かった。聞きたいことがあったから」
「何か、御用ですか?」
 
 レンは優しそうな笑顔を崩さず、質問してきた。

「ああ、下界のことで……」
「ひとまず、私の家に行きましょう。ここで、立ち話と言うのも何ですからね」
「あ、ああ……」
 
 俺は素早く立ち上がって頷いた。
 不思議とさっき受けた攻撃による痛みは消えていた。

 


         ★



 レンの家は、森の奥に建っていてこれまたメルヘンな家だった。
 木の形をしたカラフルな家だ。
 俺は客を迎えるための部屋らしい場所で豪華な赤いソファに腰掛け、レンを待っていた。

「すみません、紅茶を作るのに時間がかかってしまいまして……」
「ああ、いや……謝らなくても……」
 
 レンは出来上がったばかりの紅茶を俺の前に置く。
 その後、向かい側のソファに腰掛けると口を開いた。

「下界のことを、聞きたいんですよね?」
「ああ」
「教えるのは、かまいませんが……対価は払ってもらいます。ここにはお金がありませんから、ちょっとした、すぐにできることです」
「分かった。じゃあ、一つ、聞きたい」
 
 俺は、迷わず聞いた。

「俺は、誰に殺されたんだ?」
「……すみません、ここのルールでは、殺された人間が自分を殺したのが誰か知らない場合、教えてはならないんです」
「そう、なのか……」
 
 俺は、がっかりした。
 諦めるしか、ないのか……。

「でも、ヒントなら教えられます」
「ヒント…」
 
 ヒント、か。聞けば自分で犯人を突き止めることができるかもしれない。

「では、一つ、あなたは恨みを買ってはいなかった」
 恨みは買ってない、か……となると、通り魔の仕業か?
「もう一つ、あなたを殺したのは、死者です」
「死者…?」
 
 俺は思わず身を乗り出した。
 それは、つまり……この天国にいるものなのか?

「これで全てです」
「ありがとう……」
「ところで、対価ですが」
「あ、何をするんだ?」
 
 あんまり見当がつかないな。皿洗いとか、家事の手伝いか?

「私の相手をしてください」
「相手?」
「ええ、簡単ですよ」
 
 レンはにこやかにそう言うと、俺のネクタイに手をかける。
 いやいや、え? 何だ? 冷や汗がダラダラと尋常じゃないほど流れてくる。
 俺はレンを必死に制止しつつ大声で叫んだ。

「や、やめれーーーーーーーー! 俺なんか、男みたいだし、おいしくないってーーーーーーー! やめれーーーーーー!」
 
 不意に大きな音が響き、ドアが開いた。
 そこに立っていたのはラファンだった。
 ラファンは、部屋に入って来て俺の腕を掴む。
 にっこりと微笑み、

「こんにちは、レン。この子がお邪魔しちゃったみたいだね。じゃあね」
 
 そう言って、レンの家を出た。